ある研修医の手記16

 

「『来週からケンちゃん、やっと泌尿器科の研修ね。楽しみだわ。待ってるからね』と、のりちゃん。何か実験台にされそうで恐いが、超高齢社会で頻尿も増えているので、ちゃんと勉強しなければならない。のりちゃんは『ひんにょう器科だよ』と茶化すが、患者さんにとって実際は切実な問題だ。どこかの政治家と同じような事を言うな、と言いたい。でも、カラオケで新曲をだの、最後のディナーショーとは言わなかった。

 ママは最近、夜中にトイレに起きるらしくて、それとなく藤兵衛先生への繋ぎをお願いした。二つ返事でOKしてくれた。さすがのりちゃんだけど、何か目論見もありそうだ。でもママの健康状態が良くなって、話し相手だけでもお相手が出来ればいいと思う。

 思えばこれまで危ない場面は数々あったが、僕はママのものにならずによくここまで乗り切ってこれたと思う。その代わり、のりちゃんのお蔭で僕の潜在能力は今、大爆発している。天井にいくつもシミを付けたし、風が吹いただけでもムクッとする位だ。

 のりちゃんはこないだ、病院の階段でズボンのポケットに手をねじ込みしごいて来た。僕は思わず腰が引けた。『こんな所で…』『ねぇ、今度一緒に病院でHするビデオ見ようよ』。病院でなんて、僕は絶対にしないぞ! 絶対に……たぶん……と思うけど……」