医者「ただ今より、和菓子屋の若女将の訴えについて吟味いたす。一同の者おもてをあげぇ。約定により、和菓子屋の番頭も同席する。若女将、いかがいたした」

患者「昨晩より頭が割れるように痛くて痛くて、我慢出来ないのでございます」

医者「そなた、何か心当たりがあるのではないか? 念のために聞く。ありていに申せ。ないのか? まぁよい。診て進ぜよう……ははぁ、やはりそういう事であったか」

患者「やはりとは? どういう訳で頭が痛いのでございましょう?」

医者「そなたの痛み察するに余りあるが、よくぞ我慢したな。簪が刺さっておる。自ら刺したのか? 他に下手人がおるのか? 正直に申してみよ。黙っていては分からんぞ」

患者「……じ、実は番頭さんといい仲になりまして、髪を結っている所へ主人が来たので慌てて番頭さんが簪を挿してから痛いのでございます」

医者「よくぞ正直に申した。実はな、とうに調べはついておる。番頭、以上相違ないな? 間男は御法度である。裁きを申し渡す。番頭、そのほうに遠島を申し付ける。引っ立てぇ」

番頭「ははーっ、恐れ入りましてございます」

医者「若女将、今日から身を入れ替えて主人を持り立てるのだぞ。本日はこれまで」