私が子供の頃にピアノを習った先生は、音大卒だったけれど、声楽科だったそうだ。そのせいなのか分からないけど、一時間のピアノのレッスンの最後の15分はソルフェージュをさせられていた。そういう経緯もあるのか、私は、物心ついた時には、ピアノ譜を目で読んで、だいたい「こんな曲なのかな」という見当がつくようになっていた。
しかし、ピアノ教室を始めて、沢山の生徒と接するようになり、何年もピアノを習ってきたという転校生では、簡単な楽譜を見ても、どういう風に聞こえる曲なのかという見当が全くつかないという生徒が続出したり、私が最初から受け持った生徒でも、私が思っているほどに、曲のイメージを持てていないことに気づいた。
そこで、ここ数年は、楽譜と全く違う音を弾いている(楽譜にはドとあるのにソを弾いているのに、間違っている音を弾いているということにすら気が付かない)生徒や、本当に初歩の単一メロディーの曲をやっている生徒には、ソルフェージュをさせることにしている。
しかし、生徒達の多くは「ピアノを弾く」という行為と「自分の声で音程を取って歌う」という行為を切り離して考えいる子が多く「ピアノを弾かずに、譜面を追って歌ってみよう」というと、露骨に嫌な顔をしたりする。そして、アメリカ人の子供は歌を歌うという行為に慣れていないのか、歌うということが何なのか(音程を取って、リズムを付けて声を出す)ということす出来なかったりする。前にいた3~4年もピアノのレッスンを(他の先生の所で)してきたという生徒は、声すら出すことが出来なかった。
それが、先日、私のお教室に通って、もう三年になろうかという、小学生の生徒に初めてソルフェージュをさせてみたら「これ楽しい、またやりたい」と言った。
この子は、人生初のレッスンから私が受け持ってきた子で、楽譜を読んでピアノを弾くという訓練を重ねてきたし、お母さんがそれなりに弾けるので、家でもばっちり教えてもらっているので、全く見当違いの音を弾いたりすることはないので、今までソルフェージュはやったことがなかったのだけど、先日、レッスン時間が少々余ったので、ソルフェージュをやってみようと思い立ったのだった。
私は、子供のソルフェージュ教本を日本から持ち帰ってきているので、その教本に載っている四小節ほどの曲を、まずピアノで弾かせ、ピアノと一緒に歌わせて、そして、ピアノなしで歌わせた。その子はピアノと一緒では、初めから音程を狂わせることなく歌えたのだけど、ピアノなしだと、音程が崩れ始めた。そこで「音と音の間隔を、ちゃんと聞いて」と、またピアノと一緒に歌わせ、そしてピアノなしで歌うのを何度かやると、自分の声をピアノ音にマッチさせる作業が楽しかったらしく、何度も何度も、自主的に繰り返していた。
何十人もの生徒を教えてきて、その多くにソルフェージュをさせてきた(させようと試みてきた)けれど、ソルフェージュを気に入った生徒は初めてだった。
