楽器の練習で、何か好ましくないことがある時には、何故、その好ましくないことが起きるのかの原因を追究せず、ただ、がむしゃらに「直したい」と思いながら練習しているだけでは治らないと、私は思っている。本当に小さな子供とか、とても感性が優れている人は、そうではないのかもしれないけれど、多くの人は違うと思う。長年、弾いているピアノでは、私自身、自分でそれなりに原因究明をして、解決法を見つけられることも多いのだけど、歴の短いバイオリンやチェロでは、自分では解明が出来ないし、対処法も分からないので、そういうことを教えてもらいに行くのがレッスンだと、私は思っているし、自分が教える側に立った時も、そういう姿勢でレッスンに臨んでいる。
少々前になるけれど、新しい生徒で、リズムに変な癖のある子がいた。その子は、私の元で初めてピアノに触るという子だったので、最初から、ピアノを弾く時に拍を数えることを徹底的にやってきた。しかし、変な癖(私が今まで経験したことない癖)というのは「いち、に、さん、よん」と数えなければならない時に、同じテンポで数えられず、二分音符とか全音符になると、数えるのが遅くなり「いち、に、さーん、よーん」の様になり、三拍目と四拍目の二分音符は二拍以上の長さになってしまう。
音符の読み方を初めて習った子は、二分音符や四分音符を「長い音符」と認識する子が多いので、私は「二分音符は長い音符でなくて、二拍」とか「四分音符の倍の長さ」と言うような訂正を必ず入れる。今までに教えた生徒は、だんだんにその概念がおぼえられ、そうすると拍感が良くなる。しかし、今度の新しい生徒は、説明させると「二分音符は二拍、全音符は四拍」と分かっているのだけど、実際に数を数えさせると、間延びした数え方になってしまう。
そこで、メトロノームを使ったり、一緒に数えたり、私が数えるのに合わせて弾かせてみたり、手を叩いてみたり、足踏みをしてみたり、と色々とした。メトロノームを付けて数えたり、弾いたり、または私が数えるのに合わせて弾かせたりするときは、ちゃんと拍数を合わせられるのに「じゃあ、一人でやってみて」というと「いち、に、さーーん、よーーん」と、変な拍の数え方に戻ってしまう。
私一人では、解決策が見つからないと、ピアノの先生が集まっているSNSのグループで問いかけをしてみたのだけど、どの方からの返答も、私がもう試して、効果のない練習法しか集まらなかった。過去に何度か、私一人では、どうしても解決策が見つからない時に、同じグループに質問をしてみたこともあるのだけど、的外れな返答や、私が考えて試したけれど、問題解決につながらなかった方法についての返答しかなかったので「やっぱり、このグループはあまり役に立たないなぁ」などと思っていた。
少しの間、どうやったら、この子の拍感を直せるのかと悶々としていたのだけど、ある時、ハタと「もしかしたら、二分音符は四分音符は「長く伸ばす」と思っているから、数の数え方自体をゆっくりにしないといけないとおもっているのかもしれない」と思いついた。そこで、次のレッスンでは、算数用(分数)のブロックを使って、二分音符は「いち、に」と数えるから、四分音符の倍の長さになるのであって、「いーーーち、にーーー」と数えたら、四分音符の倍、つまり二拍より長くなってしまうよね、と説明すると「そうなんだ、長い音だから数える時もゆっくりにしないといけないのだと思っていた」と、私の予感が的中した。
そして、四分音符、二分音符や全音符が混じった楽譜で拍を取らせてみると、間延びした数の数え方が収まった。二分音符や全音符を見たら、間延びした数え方をすることが癖になってしまったので、変な数え方が出てきてしまうことは、よくあるけれど「間延びしてる。均等に数えよう」と諭すと、治る。私はリズム感の問題だとおもっていたけれど、それは間違えで、認識に問題があった。これで、この子の拍取りの問題は解決に向かって動き始めた。やはり、教師として、問題の原因を正しく究明することは大事だと、再確認させられた。