先日、オーケストラのリハーサル中に、ミュートを装着しようとしたら「バッターン」と大きな音がして、ブリッジが倒れてしまった。実は、数週間前のリハーサルでも、とある他のバイオリン奏者の方のブリッジが似たように大きな音を立てて倒れた。その方のブリッジは割れてしまって倒れたのか、倒れて割れてしまったのか、使いものにならなくなり、他の団員さんが偶々持っていたスペアのブリッジを装着して、リハーサルに再参加をした。
私の場合は、ブリッジは割れてはいなかったし、バイオリン自体に一目でわかるような傷もなかったので、ほっとして、弦を緩めてブリッジを立てなおして調弦しようとした。その間、私はオーケストラの自席に座っていたのだけど、他の人はリハーサルを続けているので、音楽が鳴っている中で、調弦するのも難しいと思い、廊下へ出て調弦をすることにした。
次席を立って、バイオリンを抱えて歩くと、バイオリンの中に何かがあるのが、カラカラと音を立てている。装着しようとしていたミュートが穴から落ちてしまったのかなと思い、バイオリンから出そうとしたのだけど、なかなか穴から出てこない。とりあえずは、ミュートは入れっぱなしで、調弦して、リハーサルに戻り、リハーサルが終わってから、ゆっくりとミュートを取り出せばよいやと思った。
そんな時に、ちらりとバイオリンの内部の異物が見えたのだけど、それは、ミュートの黒色ではなく、木の色の薄い茶色だった。これは外部から侵入したミュートではないと、中で転がっている物質をよくよく見てみると、魂柱らしいと気が付いた。魂柱がないのに、弦を張って、もっと圧力がかかる弾いたりしたら大変なことになるだろうと、その後のリハーサルは(色々な指示が出るだろうと、帰宅せず)見学することにした。
リハーサルは夜で、終了は22時ごろとなるので、翌朝、朝一でバイオリン工房に連絡すると「何時ごろ来る?」と聞かれたので、その日のお昼ごろうかがうことにした。修理に掛かる費用の予想を聞いてみると「20ドル(3000円ほど)」というではないか。このお値段だとすると、結構簡単な作業で、時間もあまりかからないのかもしれないと、聞いてみると、20分から40分くらいで出来る作業だという。私は、てっきり、バイオリンを預けて、また取りにいかなくてはいけないと思っていたのだけど、それならば、仕事をしていもらっている間に、お昼でも食べていようと思い、工房に向かった。
さて、工房のあるビルの入り口に着くとインターコムはあるのだけど、どの部屋を呼んだらよいのかが分からない。そういえば、着いたら電話してと言われていたので、電話を掛けると、少々して、職人さんが出て来てくれた。バイオリンを預けて行っても良いし、一緒に来ても良いと言われたので、流石に、初めて持ち込んだ工房に入らず、ビルの入り口でバイオリンを渡すのはと思い、一緒についていくことにした。
私は、工房へ行って、バイオリンを渡し、ケースなどは持ち出して、車を止めた所の目の前にあった、ラーメン屋さんに行こうと思っていたのだけど、職人さんは私の目の前で修理を始めた。まあ、あまり時間が掛からない作業だという事だからと、そこで待つことにした。職人さんは、少々手こずっている様子だったけれど、30分ほどで、魂柱を立ててくれた。私の当初の予想では、ノリか何かで留められているのかと思ったけれど、ただはまっているだけのようだった。修理が終わると「魂柱は正しい位置にあるけれど、音が違うこともあるから、弾いて確認」するようにと言われ、少々、工房で弾いたのだけど、なんだか、今までよりもバイオリンが響いているような感じがした。それは、良いことだろうと、無事に修理を終え、帰宅の途に就くことにした。
修理が終わったので、直帰しても良かったのだけど、車の駐車場は一時間ほどの料金を前払いしてあるし、行こうと思っていたラーメン屋さんは、がら空きで(ここは、市内に何軒かあるラーメン屋さんの一件なのだけど、他のロケーションでは行列が出来るお店なので、不味くてお客が入らないという事はないだろうと)30分もあればラーメン一杯は食べられるだろうと、ラーメン屋さんにも立ち寄った。お腹も一杯になり、私もバイオリンもすっかり元気になった。