うちのピアノ教室では、春、4月の終わりから5月の始め位に、発表会を開いている。発表会に参加させる生徒の基準としては、簡単な童謡のような曲のメロディーを弾けるようになっているということで、だいたい、幼稚園児が年初めの1月ころからレッスンを始めると、発表会の頃には8小節とか、12小節とか短い単一メロディーの曲が弾けるようになる。そこで、今年の初めからレッスンを受け始めた9歳か10歳のUちゃんも、発表会までには曲が弾けるようになるだろうと見込んで、出演することになった。

 

春の発表会では、ソロ曲と連弾曲、一人2曲ずつ弾かせるのが常で、Uちゃんもそのつもりで、発表会の曲選びなどを始めた。Uちゃんは、約一年前に私のお教室でレッスンを始めたIちゃんの紹介で来た子で、折角、お友達同士だから、二人で連弾をさせることにした。そして、曲はベートベンの歓喜の歌にした。この曲は、簡単バージョンが色々出回っていて、二人とも初級の楽譜がネットにあったのを見つけ、上のパートを弾くUちゃんはメロディーを、下のパートを弾くIちゃんには、伴奏(ハモリパートとベースライン)を弾かせることにした。

 

Iちゃんの方は順調に練習が進んだのだけど、Uちゃんは全く進まない。まず、楽譜の音と鍵盤の位置を確認せずに、適当に鍵盤に手を乗せて弾き始めるので、全く訳の分からない音が鳴る。すると、自分でも「おかしい」と思うのか、鍵盤の変な場所に飛んで行って、そのまま指を動かし始める。歓喜の歌の(ハ長調)メロディーは基本的にドからソしか使わないので、最初の音と鍵盤を確認、正しい運指で弾き始めることをを何度も何度も繰り返し(一か月くらいして)ようやくメロディーの音の順番は追えるようになった。

 

そして、次の課題は、リズム。使っている楽譜には、四分音符、半音符、全音符、そして、八分音符と付点四分音符が出てくる。普段なら、それぞれの音符の拍の取り方をしっかり教えて、概念を理解させ、自分で拍を取れるようにさせていて、私の演奏を聞かせて真似させてリズムを覚えさせるということは極力やらないようにしている(それをしていると楽譜が読めなくて、拍の取れない生徒が出来上がる)のだけど、Uちゃんの場合は、理解力も極端に落ちるので、理解できるまでには、あと二カ月とか三か月はかかるのではと思われた。背に腹は代えられないと、私の演奏を聞かせてコピーさせることにした。

 

子供の生徒は耳が良い子が多く、何度か聞けば自分でも弾けるようになる子が多いのだけど、Uちゃんの場合は違った。何度も聞かせて、一緒に何度も歌って、何度も一緒に弾いて、を繰り返したけれど、本人が一人で弾けるかどうかは半々くらいの確率だった。リズム以外にも、指の位置を直ぐに忘れるので、演奏の途中で考える時間が必要になり、楽譜にない休符が入る。それではダメだと、一人で何度も弾かせるけれどなかなか出来ないし、本人はきちんと弾いている気になっているようす。

 

でも、これは困ったと思いながらも、I ちゃんと合わせるレッスンに入ると、自分でも弾けていないことを認識したようだ。それでも、基本的に頭もあまりよくなく、運動神経もあまりよくなく、感性も鈍いようで、常に横で見ていないと、勝手な音や、リズムにくるってしまう。そして、ソロ曲に選んだ、ピアノを始めて三曲目位に弾く練習曲も、似たような状態。発表会までに間に合わないのではと焦った私は、親御さんに特別レッスンを提案した。

 

その、特別レッスンの前に、連弾上パートとソロ曲と二つを私がビデオに撮影、親御さんに送り、家での練習はビデオと一緒に弾かせるようにと頼んだ。そして、問題の特別レッスンには、どうにか音楽らしい曲が(連弾、ソロ曲ともに)弾けるようになっていた。そして、残すところ一度となった、Uちゃんとの合同レッスンでは、連弾、ソロ曲とも、どうにか独り立ちして、曲らしく弾けるようになった。

 

あぁ、間に合ってよかった、、、。