私は今までに2度ベーゼンドルファーを弾いたことがある。一度は羽田空港にあったストピで、もう一度は弾きあい会に参加した時だった。どちらの時も、キラキラした素敵な音で💛💛となった。でも、家には立派なスタインウェイもあることだし、今からベーゼンドルファーはさすがに買えないなぁと思っていた。

 

そんな風に考えて一年二年が過ぎたころ、世界三大ピアノ(スタインウェイ、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファー)の音比べという動画をネットで、旦那と一緒に見ていた。調律師さんが作成した動画で、それぞれのメーカーのこだわりや、ピアノの構造の違いなども話していて、とても興味深い動画だった。最後に、音比べが出来る様に、それぞれのピアノを弾いくれていて、それを聞き終わった旦那がベーゼンドルファーが一番好きだといった。実は私も同意見でベーゼンドルファーが一番素敵な音だと思った。これは、スタインウェイオーナーにとってまずい感想なのではと思われたけど、その時も「今更ベーゼンドルファーなんてダメ!」と自分に言い聞かせていた。

 

しかし、先日、気の迷いを起こして、ベーゼンドルファーのグランドピアノの型や値段などについて、ネット検索をしてしまった。すると、ベーゼンドルファーとスタインウェイのお値段はだいたい同じくらいと発覚した上に、近所にベーゼンドルファーのディーラーさんまであることが分かった。

 

アメリカではピアノが上達するにしたがって、ピアノを買い替はよくあることで、そういう場合に新しいものを購入してもらいやするするために、結構良い下取り価格で引き取ってくれる。グレードアップする時などは購入時の支払額満額で下取ってくれることも普通にある。ベーゼンドルファーディーラーなら、ベーゼンドルファーを売りたいだろうし、お値段的に同等にスタインウェイを下取ってもらえたら、そんなに持ち出しなく晴れて、ベーゼンドルファーを手に入れることが出来る様に思えた。

 

私は新品のピアノを買うのは損をした気になるので、中古を買うと決めている。近所のベーゼンドルファー店にある、在庫の中古ベーゼンドルファーはおしゃれな形の特別モデル(つまり高い)と外観の色が気に入らないものだけだったけれど、本当に買い替えるつもりなら、このくらいのお値段の、このモデルの中古を探してといえば探してくれるだろうしと、とりあえず下見にとお店に向かった。

 

お店に入ると、販売員のおじちゃんが「何をお探しですか?」と声をかけてくる。下取りの話は良いものが見つかってからの値段交渉の時にした方が良いだろうと「ベーゼンドルファー購入を考えています」と伝える。ディーラーといっても、さすがにベーゼンドルファーがポンポン売れるわけではないのだろう、それぞれ違うサイズで新品と中古を合わせて5台ほどしか置いていなかった。

 

全部弾いたのだけど、どれもピンとこない。私が前に味わったキラキラ感がない。販売員のおじさんは、ベーゼンドルファーの良いところを色々言ってきて(知ってたけど)頑張って売ろうとする。そこで「実はスタインウェイのBを持っていて、それから買い替えをしようと思ったのだけど、どのベーゼンドルファーも今のBと比べて格段に良いというわけではないから、買い替える理由が見つからない」と(何度も)言って断った。

 

帰り際に「気に入るものがなくて残念です」と言われて「気に入るものがなかったのは残念だけど、これ以上ピアノにお金を費やさなくてよくなったのは幸運です」とコメントをして帰ってきた。そして、帰宅して、家のスタインウェイに「浮気してごめんね」と謝った。