ピアノのレッスンに来る生徒さん達に一番学んで欲しいことは、ピアノを続けていく上で、又ピアノの上達のために自分がどういう練習をしたらよいかを考える力と問題にぶつかったときに解決するための方法を見つける力である。私はピアノ弾きとしては大したことないのは分かっているので、技術とか感性とかは教えられることが限られていると思うけど、それ以上に、私の人生観とか価値観とかも影響していると思う。

 

私の本職は免許のいるサービス業で、資格試験に受けるには(アメリカの場合)基本的に特定の大学院を卒業していないといけないし、それなりに記憶力もいる。初めて会ったような人と私の職業の話になると、すごい量の情報を暗記しないといけないのですよねと言われる。試験でも、日常の業務遂行の為でも、それなりの情報は暗記していないといけないけれど、一般人(?)が思うほど大量の情報を記憶してないくても仕事は滞りなく進むし、それ(記憶)以上に大事なのは「現状を理解し、問題解決のために必要な事項とそうでない事項を的確に判断し、問題解決に必要な情報はどこに行ったら(どんな文献を見たら)見つかるのかを知っている」ことだと思っている。

 

そんな考えもあり、レッスン中に生徒が「ここ分からない」といっても「答え」を教えることは私はほぼせずに、答えを見つけるための道筋を教える。どの生徒も、ゆくゆくは独り立ちして、私の手を離れていくことが前提だから、問題に直面した時は自分で状況を分析、判断し、自分で答えを見つけて問題解決が出来るようになってほしい。特に子供の場合はピアノを弾いたり、音楽を趣味として続ける為に必要な問題解決のスキルだけでなく、この先、人生で必ず必要になる「考える力」をつけてもらいたい。この「考える力」以外にも生徒一人一人の性格や、長所や短所を見極めたうえで、この子にはこんなことも身に着けてもらいたい(ピアノや音楽に直結していなくても)というものが出てくる。

 

小学一年生のA君は一か月ほど前からピアノのレッスンを始めた。お母さまが少々ピアノを弾くそうで、息子にも是非、ピアノが弾けるようになってほしいらしい。A君自身もピアノを弾けるようになりたいようで、それなりにやる気はあるようなのだけど、なんせ落ち着きがない。お試しレッスンでお母さまとレッスン方針などについて話しているときは、(私の)家じゅうをふらふらしていたし(ここに座っていてとお母さんに注意されてもすぐにどこかに行ってしまう)、ADHDではと思うくらいに忙しない。レッスン中でも、ピアノにちょっと触ったと思うとふらふらどこかへ行ってしまったりもする。

 

集中力が長く続かない子だから、色々なこと(ピアノに触る、ワークブックをする、ソルフェージュをする、音楽体操をするなど)を細切れにやっていかないといけないと思っていたけど、いつどこで集中力が切れるのかの判断が難しい。普段は生徒が一つのことに飽きてきたようなそぶりがあればレッスン中に方向転換をするのだけど、A君の場合は飽きが来るのがほかの同年代の子供より早い気がする。初めはA君が飽きそうなタイミングでレッスン作業を変えていたのだけど、それだとレッスンに全くならない。(練習曲を一度弾いて、「こういう風に注意してもう一度弾いてみよう」というと、もう飽きていて、二度目は弾きたくなかったりする。)

 

そんなことを何度も体験して、「腰を落ち着かせ、じっくりと一つの事に取り組む忍耐力をつける」というのがA君のレッスンでの大きな課題になっている。A君の面白いところは、一つの事柄に飽きたようでも(たまに「もうつまらない」とか言ったりもする)粘り強く「我慢してもう少しやってみよう」と促すと何秒か事には真面目に作業に取り組めるようになる。飽きたことをいやいや延々と何十分もやったりしたらうんざりするだろうけど、この切り替わりの早さだとうんざりしてピアノ嫌い!となる可能性は低いと思われる。面白くない、飽きたと思ったことにもチャレンジし続けることも時に大事たということを学んでくれたらよいと思っている。