コラム | 浅田真央さん&浅田舞さん 応援ブログ

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小塚崇彦、「愛」を演じて得た銀メダル 2011年4月29日(金)青嶋ひろの

■「いつも通り」以上の力を発揮
$ゆうゆうのブログ 小塚崇彦(トヨタ自動車)はショートプログラム(SP)でトリプルアクセルを失敗して6位スタート。日本勢では、2位に織田信成、3位に高橋大輔と、先輩2人がメダル圏内につけた。この時点で小塚が日本勢唯一のメダリストになろうとは誰が予想しただろうか?

「昨日(SP)は今から考えれば、焦りまくっていたんですよ。やっと来た世界選手権に対して、やる気が出過ぎて、ウオームアップのメニューもいつもより早くこなし過ぎてしまったくらい。ほとんど“運動会のお父さん状態”でした(笑)」(小塚)

 しかし、フリーでの最終グループ。織田はトリプルトゥループの跳び過ぎ違反で10点前後の失点。高橋大輔は最初のジャンプを跳んだ時点でスケート靴のエッジ(刃)のビスが外れるというアクシデントで演技中断となった。
 一方でカナダのパトリック・チャンとロシアのアルトゥール・ガチンスキーは、それぞれ4回転を着氷し、会場と一体となるエネルギッシュな演技を見せる。日本人、日本関係者は、残された小塚に祈るような思いを託すこととなった。

「小塚で大丈夫だろうか?」。そんな思いが脳裏によぎる。確かに彼は今シーズンのグランプリファイナルトップ進出者、そして全日本チャンピオンだ。とはいえ、ずっと風除けをしてくれた高橋や織田の後ろをのびのびと走って来た日本チームの末っ子でもある。佐藤久美子コーチに言わせれば「温室育ち」の甘えん坊だ。
 先輩2人がアクシデントを前に力を発揮しきれなかったこの状況を、高橋の音楽中断などで薄々感じ取っているに違いない。自分よりも若いのに国の第一代表として奮闘するチャンやガチンスキーが、大観衆を大いに沸かせた様子も聞こえているはずだ。こんな状況でいつも通りの力が発揮できたら、彼は本当の全日本チャンピオンなのだが……。

 だが、そんな心配をよそに、彼は「いつも通り」以上の力を、モスクワ・メガスポルトのリンクに発散してしまった。

■「これこそ、本当のパーフェクト」
$ゆうゆうのブログ まずは1つ目のジャンプ。今シーズン、軽い両足着氷での成功はあったが、クリーンに決められていなかった4回転を、練習でしか見たことがないほどの鮮やかさで着氷。残りのジャンプも、2度のトリプルアクセルと3回転-3回転を含め、6種類の3回転をすべて完ぺきに着氷した。エレメンツも、ステップはレベル3、スピンはすべてレベル4。そして13のエレメンツすべてで、9人のジャッジすべてからプラス1以上の評価だった(ほとんどがプラス2か3で、0さえひとつもないのだ!)。
「これこそ、本当のパーフェクトというものです」
 そんなことをつぶやいた国際ジャッジもいたほど、要素の上では完ぺきすぎるプログラムを見せ、なんと「新採点の申し子」パトリック・チャンを、エレメンツスコア(要素点)で上回るという快挙を成し遂げてしまった。

「でもこのルールは、エレメンツの出来だけで勝敗が決まるわけではないから……プログラムコンポーネンツスコア(演技構成点)あってのルール、フィギュアスケートです」(小塚)
 そう話す演技面は、かつて見たことがないものになった。何か温かいものに包まれているような、見るものを吸い込んでいくような……思いのほとばしるプログラムを小塚は見せたのだ。

■沸き上がっていた「愛」を表現
$ゆうゆうのブログ  小塚は生まれたころから氷の上で育ち、スケーターである祖父にも、両親や伯母にも、佐藤コーチ夫妻にも、目いっぱいの愛情を注がれて育った。成長してからも、佐藤有香やマリーナ・ズウェア、カート・ブラウニング、サンドラ・ベジックなど、世界の一流スケーター、一流振付け師に認められ、惜しみないバックアップを得てきた。

 この夜はそのやわらかなスケートで、スケートに愛された青年の喜びを謳(うた)いあげているようにも見えた。振付師のズウェアがプログラムに込めた愛、コーチたちがすべてを注ぎ込んで教えた、スケーティングテクニックに込めた愛。そして小塚自身が彼らのすべての愛情を形に変えて、ここまで柔らかく、愛おしい作品を氷上に作り上げていく。

 予選時と同じ、リストの『ピアノ協奏曲1番』であっても、まったく違うプログラム。試合終了後、そんな滑りができた理由を尋ねたところ、驚くような答えが返ってきてしまった。
「昨日、ショートプログラムの後にこの大会のオープニングセレモニーを見たんです。あの日本を意識した演出に、僕たちを応援してくれるロシアの人々の愛をすごく感じて……。そんなみなさんの気持ちに、僕はフリーで応えたいな、と思いました。ロシアから送られた愛、温かみを、このプログラムで表現することができるだろうか……そんなことを、ずっと頭の中でぐるぐる考えていたんです。だから今日は4分半の最後の最後まで、勢いだけではなく、自分の見せたいものを思いながら滑ることができたんじゃないかな」
 本当に彼は、彼の中に沸き上がっていた「愛」を表現しようとしていたのだ。

■世界最高のスケーターへ
  東京での世界選手権の中止、モスクワでの代替開催決定、1カ月先へのスケジュール変更。大震災に対する世界の人々の思い、その思いを受け止めた日本の一青年の心にあふれかえったもの。
 めまぐるしく過ぎ去っていく一連の出来事の中で、小塚が感じたこと、考えたことすべて。それを4分半の演技にすべて注ぎこみ、言葉などなくとも、見る人に彼の中の「愛」を、こんなにもストレートに伝えてしまったのだ。
 完ぺきなエレメンツという、肉体の奏でる美。ほとばしる思いという、精神の紡ぎだす美。
 両方を、フィギュアスケートという手段を使ってこれ以上ないくらのレベルで見せ、小塚は史上4人目の日本人世界選手権メダリストに。そして名実ともに、日本の一番手となった。

 前世界チャンピオン高橋大輔から、16歳の四大陸選手権メダリスト羽生結弦、さらには彼らに続くたくさんの若手選手まで。世界最強の布陣を誇る日本の男子フィギュアスケートを、これからは小塚崇彦が引っ張っていく。彼らの先頭を切って、彼以上に確実な4回転ジャンプと、高いプログラムコンポーネンツを持つパトリック・チャンや、複数の4回転を携えた世界の若手たちと、これから3年間、真っ向から対峙(たいじ)していくことになる。
 人のいい笑顔を見せる銀メダリストには、その覚悟ができているだろうか?

「まだ乗ったことがなかった、世界選手権の表彰台。立ってみたら……ほんとにいい場所だなあって感じました」

 私たちの手の届かない遠い場所、世界の表彰台から帰って来たばかりの彼は、そんな人のいい言葉とともに顔をほころばせ、取り囲む人々を笑顔にした。

 やはり小塚崇彦は、愛に包まれて育ったスケーターだ。年を追うごとに高まる戦いの厳しさの中でも、この素直で愛くるしいキャラクターは決して変わらない。でも、そのりりしい瞳でしっかりと前を見て、世界最高のスケーターを目指していく。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/winter/skate/figure/text/201104290004-spnavi_1.html