「別居解消までの道のり」シリーズの途中ですが、忘れないうちについ最近の話を投稿させてください。
私とモラ夫は、夜7時半頃、近くの温泉施設に向かっていた。
もちろん、車を運転していたのは私だ。
温泉への曲がり角の手前に差し掛かったとき。
暗がりのなかで人が歩道を這っているのが見えた。
本当に、四つん這いで歩道を這っていたのである。
四つん這いで這っていた人は、道路沿いの灯りの点っていない家の玄関に向かって、斜面をゆっくりゆっくりと這い上がろうとしていた。
驚いた私は、車のスピードを落とし、10メートルほど先の路肩に車を止めた。
「ど、ど、どうする?おかしいよね。普通じゃないよね。」
モラ夫は助手席でしばらく黙ったあと、
「放っておくわけにはいかないな。行ってくる。」
と言って、車を降りた。
私はハザードをつけてしばらく車に乗っていたが、モラ夫がなかなか戻ってこないので、懐中電灯を持って車を降りた。
(田舎なので車に懐中電灯は常備している。)
おそるおそる現場に近づくと、斜面に転がっている人にモラ夫が声をかけていた。
「おじさん、大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。」
「大丈夫そうに見えないよ。このおうちに住んでるの?」
「うんうん、大丈夫。」
おじさんは転がったまま立とうとしない。
暗がりの中で転んで怪我をしてしまったのかもしれないと思った私は、彼の足元を懐中電灯で照らした。
その人は靴を履いていなかった。
気温マイナス2℃。
泥だらけの穴のあいた靴下で、家の前の地面を這う初老の男性。
どうにもこうにも、シチュエーションが理解できなかった。
「大丈夫じゃないよ、おじさん。暗い中、靴も履かずにどうしたの。心配だよ。こんな寒い中にいたら、凍えちゃうよ。おじさんが玄関の中に入るまでここで見てるからさ。歩ける??手伝おうか?」
「ありがとう、ありがとう。本当にありがとう。ありがとうね。」
懐中電灯の灯りがチラッとおじさんの顔にあたった。
口髭をたくわえた、白髪のとても品の良いナイスミドル+αのおじ様だった。
感覚でしかないが、泥棒に入ろうとしていたようには見えない。
そもそも、泥棒だったら行き交う車のライトが当たるところを這いのぼるわけがない。
「ホントに大丈夫なの?じゃあ、俺、行っちゃうよ。」
「ありがとう、ありがとう、本当にありがとう。」
モラ夫と私は後ろ髪を引かれながら、その場を後にした。
「警察に連絡しなくて大丈夫かな。」
「うーん、あの家に住んでると言ってたからなぁ。事情はわからんが、まあ玄関まで3mくらいだしな。さくっと温泉に入って、帰りにもう一度様子を見てみよう。」
「お酒飲んでた?」
「いや、酒の匂いはしなかった。認知症かもしれないな。」
「そうかなぁ…品の良いおじ様だったし、認知症っていう感じにも見えなかったけど…でも、靴を履かずに家の外を這ってるのはあり得ないよね…」
気もそぞろでさくっと温泉に入り、約1時間後、私たちは現場の家の前に差し掛かった。
家に灯りは点っていなかった。
「無事に中に入れたのかな。」
車を止めて道路から懐中電灯で玄関の方を照らしたが、よく見えない。
真っ暗な中、灯りの点っていない見知らぬ人の家の敷地に入っていくのは勇気がいる。
(懐中電灯で玄関付近を照らすことにだって抵抗があった。)
「玄関前に人影はないみたいだな…きっと、大丈夫だよ。家の中に入れたんだよ。」
家に灯りが点っていないことが気にはなったが、私たちはそのまま自宅に向かうことにした。
しばらくするとモラ夫が
「やっぱり警察に連絡しておくか。」
と言い、ポケットからスマホを取り出した。
警察は、モラ夫の名前と連絡先を確認した上で
「ご連絡ありがとうございます。すぐに行ってみます。」と言った。
つづく
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