ことの始まりはこちらから



モラ夫が集中治療室に入ってから1時間ほどして、「状況をご説明します」と医師に呼ばれた。

義兄も同席してくれた。


今のところ血腫はひろがっていない。

このまま麻酔を続けて低体温療法を行う。

今夜が山なので、医師と看護師が夜通し待機する。

ご家族は帰ってもらって構わない。

開頭手術が必要になった場合はすぐに連絡する。


その後は医師と義兄が専門的な話を始め、私には理解できない言葉が飛び交った。


とりあえず病院にいても仕方ないため、私たち家族は家路に向かった。

義兄が事故現場を見たいと言ったので、我が家で現場検証を行った。

家に到着したのは明け方5時。

うっすらと空が明るくなっていた。


改めて現場を見ると、いろいろな状況がわかった。

どうやらモラ夫は、屋上で酒を飲もうとしていたようだ。

酒の入ったグラスを持って、2階からロフトにあがろうとしたところでバランスを崩し、グラスを放り投げて2階の廊下に仰向けに転がった。

そこで起き上がろうとして身体を回転させたところで、枠だけの手摺をすり抜け、リビングに転落したのだと思われる。


モラ夫は酩酊状態の千鳥足だった。

おそらく、2階の廊下に仰向けに転がったときに、自分がどこでどう転がっているかわからなかったのだろう。


リビングには、折れ足の座卓が真っ二つに割れた状態で散らばっていた。

以前、モラ夫の親友から譲り受け、仮で使用していたものだ。

この上に落ちたのか。


義両親と義理姉夫婦が帰ると、家のなかはガランとしていた。

果たしてモラ夫はここに帰ってこれるのだろうか。

ここで1人で暮らす自分を想像してみたが、決して楽しい想像ではなかった。

あんなにモラ夫の酒乱に苦しんできたのに、不思議だ。


病院から連絡が入るかもしれないと思うと、眠ることはできなかった。

朝9時にモラ夫の職場に連絡を入れて状況を伝え、モラ夫が当面会社を休むことを伝えた。

私も2日間休みをもらった。


この時点で病院から連絡はまだない。


つづく