モラ夫が大鼾をかいているうちに、私は義実家を出た。
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急げ急げで仮住まいに向かう。
車なら20分で到着するが、今日は電車だ。
道中走ったとしても、乗り換えを含めて40分はかかる。
部屋に到着すると、私はすぐにスーツケースをひっぱりだした。
仕事に使う服と靴。
それから化粧品。
ドタバタとかき集めていると、携帯が鳴った。
「たった今、モラ夫が車でそっちに向かったわよ❗️20分くらいで着くと思う。急いで❗️」
義母からだった。
私は10分で必要なものをスーツケースに詰め込み、急いで部屋を出た。
駅までスーツケースを転がしながら走る。
初乗り料金で慌てて切符を買い、駅に駆け込んだ。
改札を振り返ってみたが、モラ夫の姿はなかった。
間に合った……。
私は電車の座席で深く息を吐いた。
と同時にこれから先のことに想いを馳せた。
設計中の家はどうしよう。
土地は共有名義でローンを組んでいる。
設計士さんにも迷惑をかけてしまうのかな……。
駅を降りて、とぼとぼと歩く。
こういうときは、いつもの道も初めて歩く道のように感じるから不思議だ。
あ、この前まで空き地だったところに家が建ってる。
あ、こんなところに花が咲いてる。
思えばモラ夫とつきあい始めてから、いつもいつも走っていた。
物理的に走っていたわけではないけれど、気持ちが走っていた。
文句を言われないように。
機嫌を損ねないように。
常に先回りして考えて、自分のことは後回し。
心の底から楽しいと思えることはほとんどなかったような気がするな。
玄関の前でピンポンを押す。
扉が開くと、そこには満面の笑顔で義母が立っていた。
「marukoさん、お疲れ様。良かった、モラ夫が部屋に着く前に支度が済んで。
さあ、あがってあがって。朝からバタバタだったから、ちょっとお昼寝でもしたら?」
私は義父の提案にのり、しばらく義実家にお世話になることにしたのだった。
つづく
