私と知り合った当時、モラ夫は湾岸のタワマンに住んでいた。

東京生まれの東京育ち、「暮らすなら武蔵野大地」が合言葉だった私からすると、埋め立て地である湾岸エリアは選択肢から一番に外れるエリアなのだが、その湾岸エリアの夜景のきれいな高層マンションがモラ夫の自慢だった。

(ちなみにモラ夫も東京生まれの東京育ちである。)


つきあい始めのころ、モラ夫はそのタワマンで、私に過去の女性たちのことをつまびらやかに話してくれた。

(そもそも今の彼女に元カノの話をすること自体が変じゃないか?)


Kにゃんは、モラ夫が高校から社会人の始めまでつきあった彼女である。

宮沢りえさんに似ていて、性格も良く、モラ夫の友人たちからも人気者だったらしい。

社会人になってからは遠距離恋愛となり、毎週末はシンデレラエクスプレス。

深津絵里ちゃんか、牧瀬理穂ちゃんか、いや、Kにゃんだ❗️

想像するだけで山下達郎さんのクリスマス・イブがぐるぐると頭の中で鳴り響き、胸がキュンキューンとするではないか。


が、私は知っている。

モラ夫は、一足先に社会人になったKにゃんに、デート代をすべてださせていた。

若い彼女がそんなに高給だったはずがない。

デートの後は、きっともんもんとしていたはずだ。

そして、モラ夫はKにゃんの家の車を自分の足がわりに使い、深夜であっても自分が友人と遊んでいる場所に平気で迎えに来させていた。

1度や2度ではない。

夜遅いし危ないからとひきとめる両親を「困っているだろうから」と振り切って車を走らせていたKにゃん。

多分、心配だったからではなく、迎えに行かなかった後のモラ夫が怖かったからだろう。

可哀想なKにゃん。

恋は盲目としか言いようがない。


さて、シンデレラエクスプレスを乗り越え、大恋愛を長く続けたKにゃんだったが、モラ夫は東京に戻った配属先で新たな女性に出会い、あっさりとお年頃のKにゃんを捨ててしまう。

結果、友人や家族から総スカンをくらうこととなった。

当たり前だ。


そしてモラ夫は、今カノ(私)の前で、タワマンからの夜景を見ながら、Kにゃーん、Kにゃーん、と叫んで号泣し、毎晩焼酎をボトル1本空けたのである。


安心してください❗️

Kにゃんはその後すぐに素敵な彼をみつけ、玉の輿に乗りました❣️

うらやましい限りです。