外科病棟の人間模様 | 人生の酸いも甘いも噛みしめてしみじみ語る夕暮れのカフェ

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波風の多かった人生もようやく穏やかになりつつあります。そんな来し方を振り返りながら、暮れていく日々が少しでも豊かになるように、ささやかな日常を綴ります。カフェの片隅で、人生の大波小波、喜怒哀楽、人情の機微など語りませんか。時には毒も吐きましょう。

年末にお腹を壊して、かなり痛い思いをしましたが、夫の懸命の介抱のおかげで何とか回復しました。

 

 

ありがたや、だんな様~と、毎日拝んでおります。ウシシウシシウシシ

 

 

という冗談はさておき、昔々に入院した時のことを思い出しました。

 

 

 

 

 

30代の頃、喉が腫れたんですよ。

 

 

甲状腺を片方取らなければならなかったんですが、結果は異状なしということで、約一週間ほどの入院でした。

 

 

四人部屋で、一人は高齢の女性で腸の具合が悪く、割と長く入院しているとか。

 

 

あとは私を含め、短期の入院でしたね。

 

 

 

 

 

その高齢の女性のお連れ合いが、毎日お見舞いに来るんです。

 

 

そして椅子に座り、何十分かの間、ただ黙って奥さんのお腹に手を当てていました。

 

 

はぁ・・・・・・医学的な効果はなくても、そうやって伴侶の悪い所に手を当てているだけで、何かしらの気が伝わっていくのかもしれませんねえ。

 

 

 

 

その頃、独身だった私は、

 

 

「こうやって伴侶をいたわる気持ちは素晴らしいなあ。私にはこういう優しいパートナーが現れるだろうか。無理かなぁ」

 

 

と思ったものです。

 

 

今回、夫が私のお腹をさすってくれたとき、あの遠い昔のことを思い出しました。

 

 

はい、おかげ様で現れましたです。てへぺろてへぺろてへぺろてへぺろてへぺろ

 

 

 

 

 

 

 

さて、短い入院中には、いろんな出来事がありましたよ。

 

 

私の隣のベッドに、女子中学生が盲腸で入院してきました。

 

 

数日後に、男子がお見舞いに来たのよね。

 

 

それが絵に描いたような初々しさで、二人とも赤い顔をしてうつ向いたまま何も話せない。

 

 

ただただ二人でモジモジしているだけ。

 

 

田舎の中学生ですからね、全然すれていなくてオボコな二人でしたよ。

 

 

 

 

 

その三人入院中の部屋の空いているベッドに、もう1人入院してくることになりました。

 

 

婦長さんが来て、言うには

 

 

「申し訳ないけど、男性の部屋が満杯なので、この空きベッドに男の子を入れさせてください」

 

 

ふ~ん。

 

 

婦長さんが部屋を出た後、高齢の女性と女子中学生と私とで

 

 

「男の子?じゃぁ面接して感じが良かったら入れてあげよう」

 

 

と冗談を言って盛り上がっていました。

 

 

 

 

 

そしたら、やって来たのは4~5才くらいの可愛らしい坊ちゃんでしたよ。

 

 

こんな可愛い坊ちゃんなら大歓迎です。

 

 

でも、そのお母さんは大変そうでした。

 

 

病室の床に寝て付き添っていましたよ。

 

 

漏れ聞くところによると、姑さんが留守宅に毎日お弁当を作って届けるんだそうです。

 

 

つまり息子さん用。

 

 

で、お嫁さんは病院の床に寝て孫を看病しているのに、顔も出さない。

 

 

まぁ、世の中にはありがちなこととはいえ、息子可愛いや、嫁憎しがあまりにも露骨だわね。

 

 

 

 

 

 

隣りの病室の話です。

 

 

中年の男性が入院してきました。

 

 

胃癌の手術らしい。

 

 

その男性は引きつった青い顔をして、廊下を行ったり来たりしていました。

 

 

高齢女性からの情報によると、その男性には小指がないそうです。

 

 

「〇クザでも手術が怖くて、あんなに廊下をウロウロしているのねえ」

 

 

これも人間心理としてはありえますねえ。

 

 

荒くれた世界に生きていても、いざ大手術に臨むとなれば、肝が冷えるんでしょう。

 

 

 

 

 

私自身は異常なしの結果で、何の憂いもなく退院しましたが、短い入院の間に、様々な人間模様を垣間見させていただきました。