こんにちは、Eimiです。
寒いですね。東京は。
朝は早いし、夜は早いし。
なんか不思議な世界です。
別の国という感じではあります。
さて、今日は、久々に大宇宙さんのSFファンタジーを載せたいと思います。
一話ずつの短編になります。
ちょっと不気味な、大宇宙ワールドをお楽しみください。
『分かつもの』
≪一話≫
大宇宙 著
深夜、煉瓦造りの家が立ち並ぶ古い街並みの、その路地裏へと足を運ぶ。
薄汚れた石畳を歩くと、不快な風の音が頭上をよぎる。
彼は暗い空を仰いだ。
その建物の半ば辺りに、少し開いた窓がある。少々荒れた煉瓦の隙間に手をかけ、三角跳びで、その開いた窓へと跳び込み、即その身を潜めた。
灯りの消えた上品な造りの部屋に、大きめのベッドがあった。
そこに横たわる老婦人は、人生のほとんどを生き切った年齢だろうが、それでもそこはかとなく漂う品位は損なわれておらず、柔らかな表情はその人となりを表している。
老婦人にかけられた布団をめくり、手を、その左胸へと伸ばす。
彼の手は彼女の胸をすり抜け、鈍く光る赤い糸を掴むと、グイっと思い切って引っ張り出した。
ゆっくりと明滅するその糸は、彼女の残り余生を表すようにはかない。
「おやすみなさい」
ポケットから折りたたみ式のジャックナイフを取り出し、糸を切った。
切れた糸は色を失い、力を感じさせない物へと変わる。
まもなく老婦人は息を引き取った。
「おはようございます。新たな夜明けを貴女に・・・」
彼は、めくった掛け布団をかけ直し、侵入してきた窓から、飛び下りる。
そしてそのまま月光を背に、暗い闇へと身を寄せて行った。
――光が届かない世界へ。
手に持ったジャックナイフの刃だけが怪しく光り、やがて彼は闇に溶け、完全に姿をくらませる。
誰も、彼の行き先を知らない。
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