Eimi企画のオフィシャルブログ

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物語を作っています。コンセプトは「心を豊かにする物語作り」です。小説、動画、ボイスドラマ、自然、愛犬、題材は様々ですが、紹介とお喋りのブログです。

『人形劇』Ⅲ

 

 

 

「それで……ここ?」

 

 四人とも肩で息をしつつ、世界の果てである壁を見上げていた。

 彼らの前には壁の頂上へと伸びる梯子が掛かっている。

 

 それを見て怪訝な顔を浮かべるユミちゃん。

 

 絶対に登りたくない、という意思すら彼女の表情から感じ取れる。

 

「まあ……ここしかないし、頑張って登ろう。ケンちゃんが先頭で良い?」

 

「ねえハル? もしかして俺を盾にして、自分だけ助かろう、みたいなことを考えてない?」

 

「ああ、それはあるかも。たださあ、ハルが世界の果てを見に行こうって言ったんだから、お前が先頭になった方が良くない?」

 

 無理を言ってケンちゃんを先頭にしようとしたのが良くなかったらしく、男子の二人は反撃とばかりに言い返してきた。

 ハルキは仕方なく先頭に立ち、先に階段を登ることにした。

 

「分かった……。けど、その前に一つきかせて」

「なに?」

 

「ユミちゃんは、いつの間に人形をそんなに抱えていたの?」

 

 両腕で数体の人形を抱える、彼女の人形に指をさして声を上げた。

 その疑問に、さも当然とばかりに、彼女は答える。

 

 

「ただの人形じゃないよ。どちらかと言うと、お守りの代わりのようなものよ。身代わり人形って言うじゃない」

 

「理由がわけわからん」

 

 その後もしばらくは、ユミちゃんの人形の扱いについて談議していたが、流石に馬鹿馬鹿しいと感じたらしく、ケンちゃんとユウトが会話の流れを止めてきた。

 

 仕方なく人形についての話をやめて、天まで伸びる梯子を見上げて憂鬱になりながら、勇気を振り絞って登り始める。

 

 その後からユウト、ケンちゃん、ユミちゃんの順に続いて登ってきた。

 

「マジで長いわー……」

 

「んなことは分かってんだっつーの! 早く登れよ。三人とも詰まってんだよっ」

 

「急かすな! 家よりも高い梯子なんて、登ったことないんだよ」

 

 先頭二人が言い合う声を耳に、順当に登っていく四人。

 

 疲労により力が抜けて、一段登ることすら辛くなり始める。

 

「クッソーッ!」

 

 ハルキは歯を食いしばり、一気に駆け上がると、壁の天辺まで登り切った。

 

 

 

「あ~……疲れた……。 ほら、もうちょっとだから、三人も頑張って……!」

 

「余裕こきやがって……」

 

 馬鹿にされていると受け取ったユウトが、悔しそうに歯を食いしばって力を振り絞る。

 ほどなくして、ユウトもまた登頂し切った。

 

 ハルキは、肩で息をするユウトに近づき、ゆっくりと背を撫でて落ち着かせた。

 

「……あんがと」

 

 ユウトは照れ隠しをするように、手の甲で口元を隠して、お礼を言う。

 

 その後から、ようやく息を上げたケンちゃんとユミちゃんが姿を現した。

 

 少し休憩しようと、肩掛けから小さい飲み物を出したユミちゃんが、それを皆に配る。

 みんな、ゆっくりと息を整えていった。

 

「登ってきたって、感じだな……」

 

 壁の天辺から見下ろした世界は、とても狭く感じられた。

 

 ――不思議だった。

 それでも、人間ひとりひとりが今を生きているのだと感じさせてくれる。

 洗濯物を干し、仕事で車を走らせたり、公園でかけっこをして遊ぶ人間の姿に……。

 

「こうして見ると、世界って……本当に狭いんだな」

 

 一人感傷に浸るケンちゃんを見つめた。

 そしてハルキは、その呟きの後を繋げるように言葉を漏らした。

 

「でも、人間が生きていくには十分すぎる広さだよ……」

 

 

 

 ――狭い。

 いや、……でも、僕はそんな風に、思いたくなかった。

 

 

 

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