青空文庫をご存じですか
青空文庫は著作権が切れた作品や著者が許諾した作品をネット上で公開している電子図書館で
吉川英治(著)の小説「上杉謙信」も公開されています
本の方と比べてみましたが、章の区切りもルビも原作に忠実に再現されており、ボランティアの方々のお骨折りに敬服しました
吉川英治(著)「上杉謙信」は、第四次川中島の戦いを中心に描かれています
上杉謙信といえば、羽生さんの今季のフリー
「ステップの所の琴が印象的です」と記者の方に言われ
「そもそも 『新・平家物語』の曲を使っているんですけど、どちらかというと、日本風な、より日本風にもってきたかったっていうのがあったので」
NHK大河「新平家物語」の原作は吉川英治氏、
曲は「天と地と」と同じ冨田勲氏、オーケストラと琵琶・琴の和楽器の調和が素晴らしい音楽ですよね
「天と地と」と「新平家物語」のテーマ音楽をミックスさせることにより、羽生さんがおっしゃるようにより日本風になったと思います
元の音楽も素晴らしいけど編集が素敵すぎて感動
話を戻します
(※インタビューはマガジンさんから引用です)
(そのステップのところのイメージは)
「あそこは、自分の中ではその、信玄公と戦ったあとに、まあ、なんか川中島で戦ったあとに、霧に包まれて離れ離れになって、自分と向き合ってる時間みたいな感じなんですね。
だからその琴の音とかで、自分と向き合いながら自分の鼓動が鳴ってるのとか、その┅血が流れてる感覚とか、なんだろう、スッと殺気が落ちてく感じ┅が感じられたらいいなと思っています。ふふふふ。」
と、とても具体的に答えていらしたので、そのイメージを膨らますために、こちらの上杉謙信も読んでみました
海音寺潮五郎(著)「天と地と」で描かれている謙信よりも、吉川英治(著)「上杉謙信」の方が私は好きだな
綴られた言葉から、武将の壮絶な生き様が迫ってくるようで一気に戦国時代に引き込まれる
文体は古いので難しいけどね
小説「天と地と」にあるような色恋沙汰がないのもよいのかもしれない
そして、読み進めましたら、ありましたよ
吉川英治(著)「上杉謙信」の「死中生あり」の章とその前後のあたりのことを羽生さんはおっしゃってるんじゃないかしら
川中島の戦いを終えた後の部分、
有名な一騎打ちの後、信玄の軍が次々に駆け付けたため退却する際の話ですが
敵軍の攻撃に苦戦、近将はひとりとして鮮血にまみれない者はいない程にすさまじい光景を謙信は見ます
(海音寺潮五郎(著「天と地と」にはこのあたりの描写は詳しくは書かれていません)
多くの死者を出し、濃霧の中、味方は散り散りになるのです
謙信はふたたび馬腹に鞭を加えて奔っていた。
こよいの霧はすべて血か。
名月の面にも墨を吹いたような凄気が漂っている。
「左馬介。ここはどこか」
「三牧の畠の瀬かと思います」
「さても、遠く退いたのう」
憮然として、鞍上から月を仰いだ。そしてしきりと、謙信は、片目をしばたたいた。額から頬へとかけて浴びている血しおが睫毛に乾きかけて眼を塞いでしまうらしかった。
「そち一名か。続いて来たものは」
「左様に覚えます」
左馬介も、暗然とした。――が、謙信は何かおかしくなったように突然肩をゆすぶって笑った。
「川を渉れば、高梨山のふもと。中野筋へ出るの。さらば渉ろう。左馬介、瀬を見よ」
「はいっ」
この辺は、さして深いとも思われない。左馬介は、静々、口輪を曳いて馬を川へ導いた。
水は氷のように冷たい。
そして、白い波が、鞍を洗ってゆく。
謙信は、つぶやいた。詩を吟じるように。
「死中、生アリ。生中、生ナシ。――嗚呼、珍重珍重。秋水冷やかなるを覚ゆ。謙信、なお死なずとみゆる」
死中、生アリ
生中、生ナシ
「死中生あり」の章から引用しました
霧がすべて血だと見間違うような光景、その心情ってすさまじい
苦しんでますよね
名月なのにそれが不気味に見える心理状態ですから
(名月とは陰暦8月15日の満月のことですが、現在でいうならば秋、9月か10月の中秋の名月のことだと思います
本来ならば、一番美しいとされる月)
額から頬にかけて鮮血を浴び、まつげのあたりに流れてきた血が固まって、瞼がみょうに開けづらいんですよね
インタビューの血が流れてる感覚とか・・・
ってこの部分と次の部分のことかもしれないと思いました←個人的意見です
馬の鞍のあたりまで浸かりながら川を渡ると、
白波がたつほどの川の水は戦の血を洗い流し、清めてくれます
でも、その水は氷のように冷たいんですよ
悟りを開く苦行のようだと感じました
でもそれで、きっと殺気も落ち、冷静になれるのだと思います
「天と地と」で表現したかった羽生結弦らしらの背景には、謙信公のこのようなストーリーもあるのかもしれませんね
そして、
インタビューのふふふふは、「謙信は何かおかしくなったように突然肩をゆすぶって笑った」、この部分の心境を思い出して笑ったのかしら?
絶対違うと思うけど、まぁ妄想だからいいか
ふふふふ。
長くなってきたので。
「死中、生あり。生中、生なし」についてはまた、機会があれば書こうと思います
年度末で忙しいし、読みたい本もたくさんあるので、いつになることやら
フリー「 天と地と」との録画、もう数えきれないほど見ました
このプログラム、大好きです
SPも好きだけど
さて、もうすぐ世界選手権ですね
心配事もたくさんありますが、開催されるのならば、おそらく出てくださるでしょう
武運長久をお祈りしております