ひとつの作品を選んでレビューしよう・・・と思い立ったのはいいけど、どの作品を選んだものか。

自分がレビューを書きたい作品はいずれ全部書けばいい話なのだけど、記念すべき《ひとつめ》をどうしようか?という気持ちが出てきてしまってひとつに選べない。

 書きたい作品はいっぱいあるのだが・・・例えば『センチメントの季節』もやりたいし『ちくちくウニウニ』も書きたい。『青い春』も外せない。『ダイの大冒険』は避けて通れないし『漫画道』ってのも面白いかもしれない。嗚呼、何を書けばいいのか。

 と小一時間ほど悩んでから、とりあえずまずは『おれはキャプテン』をレビューしてみよう、と思った。

おれはキャプテン 1 (1) (少年マガジンコミックス) おれはキャプテン 1 (1) (少年マガジンコミックス)
コージィ城倉

講談社 2004-03-17
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 (どうでもいいことかもしれないけど)一応理由を記しておくと、まず僕が好きな作品で、②現在連載している作品で、③既存の枠組みの中からほんの少しはみ出ている作品という基準をクリアするものを選んでみたのだ。

 ①は言わずもがな、かもしれないけど、今後は逆に嫌いな作品や惜しいなーと思う作品も取り上げたいので、当たり前というわけではない。楽をしたかっただけだ。褒めるほうが楽だからね。

 ②は漫画読者たちが《これから読んでいきたい》作品を選べるようにである。当サイトのクロスレビューが雑誌連載作品を対象にしている理由と同じで、《将来性》を重んじるからだ。今後は連載終了作品も扱っていくけどね。

 ③も楽をしたいから、かな。王道だとか既存の枠組みの中で勝負しつつ、しかしはみ出た部分が優れている作品というのは、ある意味批評すべき部分が浮き彫りになっていると見ることができる。


 さて前置きが長くなったが、コージィ城倉作『おれはキャプテン』である。

 もう言っちゃったけど、僕これ好きです。面白いです。はい。実はこの作品、連載初期はマガジンに掲載されていたのだが、読者の人気がなかったのかマガジンスペシャルに移転したという経歴を持っている。しかし今でも連載が続いているのだからどう転ぶかわからないものだ。僕は個人的にスポーツ漫画の中では三本の指に入る面白さだと思う。もちろんその理由もこれから書くから安心してね。

 とりあえずマガジンに連載されていた頃の「中学生編」だけ簡単に概要を説明すると、主人公の中学生霧隠主将(キリガクレカズマサ)は大人しい性格でやる気のない野球部員だったが、それを憂慮した顧問の先生が彼を野球部のキャプテンに指名してしまう。「環境は人を変える」。カズマサは権力を手に入れたことによって独裁者のように振る舞い、そして野球部を改造してゆく・・・というような内容だ。

 この「改造」が面白い。「守備が命、ノックが基本」と言われる野球で守備練習をすっぱり切り捨て、攻撃重視のチーム作りをしてゆくという展開。一見、漫画においては平凡な奇策(なんじゃそりゃ)に思えないでもないが、その成果の出方が面白い。「ここ一週間雨が降らなかったからグラウンドはカチンコチンだ。球がよく転がるはずだから内野ゴロを打とう」などと眉唾なことをカズマサが言い出す。独裁的なカズマサに反発している部員たちはその言葉に疑問を持ちながらもしぶしぶ実行していく。まぁそれが上手くいったのかどうかは実際読んでもらうとして。

 僕も小学校時代野球をやっていたし、中学時代は剣道部だったが運動部には所属していたから分かるのだが、中学生の部活動なんてものは結構先生に言われた練習をそのまま実行するものだ。既存の練習法、昔から言われているセオリー、そういったものに疑問を持つことはあっても、わざわざ新理論を提唱して実行する中学生は少ない。中学生時代、「そんなもんかな」と自分を納得させて、流されるように部活動生活を過ごしたひとは多いはずだ。

 それが『おれはキャプテン』ではカズマサが好き勝手言って!実行して!させて!しかも試合で結構上手いことハマっている!

 これってちょっとしたエクスタシーだ。

 個々の《作戦》は単純なものなのにキャラクターたちが「これでほんとに大丈夫なのかよ」「あれ」「おいおい、わりかし上手くいってるぞ?」などと中学生らしく悩んでいるところなんか、《中学生の頃の自分》を見るかのようで苦笑してしまう。超人的なプレイをしたり、ツラい練習に耐えて友情が深まったり、なんてことは決して起こっていないのに、なんだか面白いのだ。


 強力な魔球もなく、熱いドラマもない、平々凡々な中学生たちの、それでも《中学生の頃の自分》とはちょっと違う漫画。

 エキサイティングとは言い難い作品だが、僕はいつも続刊が出るのが待ち遠しい。