満天の星Lovelyのブログ -4ページ目

満天の星Lovelyのブログ

60周年をあれほどに輝かせながら61周年へと繋げていかれた舟木さん、本当にお見事でした!
2023年もこれからもずっと、素晴らしい夢時間を頂けますように・・・。

          連続テレビ小説再放送 

 

     

    私が社長やったら、絶対に錠島さんをクビにしません。

    俺が生きていると感じられる瞬間は、映画の中だけだ。

    今は? 私といる今、錠島さん生きてへんの?

    息はしとるけどな。

    私は錠島さんを信じてる。役者としての才能も、人間

    としての思いやりも、私を助けてくれた優しさも。

                            俺は人を信じない。

 

                    椿屋にて

              

       夜の椿屋玄関口で、愛子が心配そうに美月の帰りを待っていた。

       黙って入ろうとする美月。「美月、撮影所でまた何かされたの?」

       首を振っただけで、美月は自分の部屋へ入っていった。

     

     ベッドに腰かけていると、美月に好きな人ができたのだと悟った愛子が入っ

     てきた。美月も梓も、ママの身体の一部だったのだから、何でもわかるのだ、

     と。ただ、梓のアパートへ行ったけれどもう来るなって、断られたというこ

     とだった。構って欲しい時に構ってくれなくて、家出したら突然焦りだすな

     んて調子良過ぎないかと言われて、反論できなかったらしい。

 

     愛子は、美月にこれだけは約束してほしいと母として娘への今の想いを話し

     た。「ママは美月の選んだ人を信じたい。でも美月はまだ18なのだから、

     つんのめって妊娠なんかしちゃだめよ。」

     「そんなんじゃないわ、錠島さんとは。」「錠島さんていうの?」

 

          錠島のアパート・・・美月との言葉を思い出している。

           「なんでそんな自信ないんですか?」

           「学歴もない、家柄もない、何もない。」

      「けど、才能がある。斬られ役でも、衣装を着けて扮装した錠島さん

       には、華がある。誰にもない輝きが、錠島さんにはある。私が社長

       やったら、絶対錠島さんをクビにはしません。」

                    

夜 椿屋

                 美月は滝乃のもとへ

     月末の会計締めのため、まだ仕事の終わらない滝乃。何か手伝おうと

     したが、撮影所でよくマッサージをさせられた美月は、滝乃のを肩を

     揉んであげることにした。

     「あんたを椿屋に縛り付けたらあかん。女は仕事なんか持たへん方が幸

      せや、そう思うてたけど、映画女優になるくらいやったらな、椿屋の

                跡継いで貰ってもよかったかも知れへんな~。」

 

     

    「お母ちゃまは、なんで椿屋継いだん?」

    「何でて、ちっちゃい時からそう言い含められて育ったさかいな~。」

    「迷わへんかったん?」「迷うて?」「いろいろと、、、」

    「どうしたん?今夜の美月ちゃん、おかしいえ。あ、昔のことは忘れたわ。」

     お母ちゃまには、ギリギリ気づかれへんかった。

 

              大京映画・・・杉本さんの監督昇進

     黒田社長が杉本さんに監督昇進の話をしている。監督に昇進とはいっても、

     テレビ製作時代劇のことなのか、映画製作でのことなのか判らず、杉本さ

     んはあまり嬉しそうではない。

        

 「僕は映画を撮るために、この大京映画に入ったのです。テレビを

        やる気はありません。」

       「テレビでは不満か?ワシもな~、映画一筋に命かけて今日まで来

        た男や。だけどな杉本、大京映画自体が潰れてしもたら、映画に  

        賭ける夢もへったくれもあらへんやないか」

       「お言葉ですが、僕は他の映画会社から出直しても映画にこだわり

        たい。」

       「甘いな~。この節、どこの映画会社も苦しい。そない簡単にいく

        と思うか?」

       「たとえ簡単にいかなくても、、、」

      「大衆の喜ぶテレビ時代劇を作ってくれ。この仕事は、古参の監督連

       中には無理や。お前の仕事や。お前の新しいセンスが必要なんや。

       約束する。会社が持ち直したら、必ず映画に復帰する。その時大京

       映画を背負って立つ監督は、杉本英記監督、君や。」

       

            その時、リーンと電話のベルが鳴りだす。

      杉本さん「時間を頂けますか」

      「時間はない」と即断を迫る黒田社長。リーン、リーンと続くベルの音。

      「はい、社長室です。はい、わかった。すぐ行く。」「間もなくクラン

       クアップ致します。」「今日は日高の最後の現場やな。」関川さん

       が杉本さんの肩をポンと叩いて撮影現場に向かった。

 

      

     本番、シーン83,カット13,トラック175

     幹 幸太朗の「無頼人」で失敗した大京が、映画製作からの撤退を発表して

              から一月、これが最後の現場やった。

                

             これにてクランクアップ、お疲れ様でした。 

                      映画製作最後なのに、寂しい現場

             

                     ご苦労様でした。

        「これでクビか、ワシら。お前、入所したての頃、ワシの助監督やったの

          覚えているか。」「はい」「共に死ぬまで映画撮ろうと誓うたんは、あれ

        はウソか。」「私も無念です。申し訳ございません。」

                           「大京を支えて来たのは、このワシらやぞ。」

           日高監督たちが花束を投げ捨て、踏みつけて現場を去っていった。

 

       杉本さんが美月に声を掛けた。テレビでの時代劇製作について、

     「『無頼人』は「木枯紋次郎」には負けている」と言ったように、

      自分を脅かすような、もっとドキッとするような美月の率直な意見

                を聞きたくて。    「脅かす?」

               「僕がやりたいのは、映画なんだ。あの大画面の中でしか表現できない

                 ことなんだ。そのために8年間も助監督で頑張って来たんだからさ。」

               「はい。けど、テレビでも表現できるものがあると思います。テレビ

                 だからこそ、、、」

                

            そこへ日高監督が入ってきた。「誰や、ここは神聖なスタッフルームやぞ。」

            日高監督、ふらつく。「モモケンやクリキンの武蔵を撮ったのは、このワシ

            や~。このワシを、黒田は裏切りよった。ヘヘ、、助監督の黒田が、、。

                  

                      英記、ワシの恨み、お前が晴らしてくれ。頼む、英記」

 

                                     黒田社長と関川さんの若竹探し

                  「若竹は、どこや」「ワシらが見落とした時代のスターは、どこや」

                      小池千之介      芝居がくさい

                        澤山宗太       今更スターにはなれん

                        植松真二       足が短いやろ 

                     

              裕次郎、見てみい。高倉健、見てみい。 今名前の出たヤツ、みなクビや。

              人件費が高うつく。大部屋にはおれへんか、大部屋には」

 

                 

              「大部屋でございますか?大部屋は所詮大部屋ですよ、社長。あそこは

                 掃き溜めでございますからね~。」

              「掃き溜めでも肥溜めでも何でも構へんやろう、鶴がおるかも知れへん

               やろ。若竹が隠れてるかも知れへんがな~。」「御意」

 

                                               美月、梓のアパートへ。

                     そんなアホな、、梓のアパートは錠島さんと同なじとこやった。

                                             錠島がアパ-トに帰ってきた。

                                       「錠島さん」「来るな、こんなとこへ」

                                         そうなの~~?

 

                                   踏切の警報器の音、電車の通り過ぎる音。

                 

                梓が、美月の持っていったパンと牛乳を食べて、アルバイトに行く準備

                をしている。急いで食べてむせた梓の背中を叩くと、「ママみたいなこ

                と、するなよ」と嫌がられる。

      パパの大反対を押し切って京大医学部受験のため家出した梓と、これまた

      同じように自分の意思を通して女優になった美月。お互いにどちらが強く

      意地を張っているのか、いかにも1歳違いの姉弟らしく、気の置けない口

      喧嘩を繰り広げている。

 

     「お姉ちゃんに俺の気持ちはわからへん。」「あんただって、私の気持ち

      わからへんやろ?」「ほんなら、もう喋ることないな。」「私かて、パ

      パやママやお母ちゃまに言いたいこと、色々ある。けど、そんなこと一々   

      全開してたら、誰とも暮らすことできひんやん。」「好き勝手しているお

      姉ちゃんにしては、えらい行儀のええ意見やなぁ。」

      「好き勝手しているのは梓やろ」

 

                                ど~んと壁を突いて、隣から抗議の音が来た。

     

    「わかったやろ。此処はお姉ちゃんの来るようなとこやない。隣、日雇い

     みたいやけど、夜になったら木刀持って出て行きよんねんで。何者やろ

     か。バイト行くで。」

    梓と美月がアパートから出たところへ、一升瓶を下げたもみじ姉さんが

    来ていた。

 

            錠島の部屋を訪ねるもみじ姉さん

      

       「物騒やな~、鍵掛けへんの? 呑まへん?」「いらん」

    「今日の日高監督、可哀そうやったな~。スタッフ切ったら、今度は役者や。

     うちらの番やな。うちら、残れるやろか?」「そんなこと言いに来たのか。」

      

    「そやない。うちら、大部屋では一番ギャラが高いんや。一緒に不安忘れよう

    思うて。」「邪魔だ。」「コップないの?」

    「邪魔だって言ってんだろ。聞こえねえのか。」カンカンとまた警報器の音。

    「あんたのオードリー、若い男と仲良う歩いてたで~。あいつも隅に置けん

     な~。」

         もみじ、大きな音を立てて戸を閉め、部屋から出ていく。

       

             一際大きな踏切の警報器の音。