連続テレビ小説オードリー再放送 ㉑
私たちにウソついて、男の人に会っていたという感じでも、、、。そ
やねぇ、やっぱりいじめやわ、可哀そうに。さっきあんたが言うたけ
ど、あの連中追い返したんがかえって逆効果やったんやろか。
あれは、あっちが非常識だと思いますから。でも、その報復だったっ
てことは、、、。
どうしよう、やっぱり黒田はんに全部話して、、、。
いけない、すぐ戻ってきます。(梓のお弁当を作っている途中だった
ことを忘れていた。)
パパが起きてきて梓に「弁当忘れてるで」と言ったが、梓はご飯の入っ
ていない作りかけのお弁当を見て、そのまゝ登校していった。お弁当の
ウインナをつまむパパを見て、「のん気ねぇ~」と愛子が言うと、
「僕には僕の哀しみはあるんやけどな」とパパ。
ここで、愛子の積年の怒りが爆発!
「何よ~。結婚するとき、パパが言ったの覚えてる?僕と一緒になっ
たら、大きな声で笑い、大きな声で泣き、大きな声で怒ってほしい。
もう何も我慢することはない。自由に、思い通りに生きてほしい。
それが僕の願いや、君への愛やって。」
「覚えてるで」
ここで突如、愛子が一部関西の言葉遣いとなる。
「全然思い通りにならへんわ。泣いても笑っても、怒っても、何にも
解決せぇへん。何とかしてよ愛してるんなら、もう~~。」
愛子もトンカツを一気に食べていく。
「今でも僕は、君の世界一の味方や。愛してるで。綺麗やで、愛子。」
「ハリウッド映画みたいな台詞、もういい」
太秦撮影所大部屋男部屋では
晋八、大部屋で寝ているジョーの元へ。
「ここやったんか、起きんかい。 起きんかい。美月に何をした。答えろ」
と、いきなりジョーを足蹴にした。
「正直に言え。夕べ、撮影所に呼び出された美月に何をした。何で、美月
がお前のアパートへ泊ってたんや。何とか言え。」
「殴れよ。大部屋俳優の顔ぐらいゆがむぐらい、殴ってみろよ。」
「美月助けたんは、何でや。」
「あいつも同じことを聞いた」
「好きなんか。ジョーさんは、スター女優しか相手にせえへんのと
違うんか。いっつも、スターしか相手にせえへんと言うてたやん
か。美月は由緒ある椿屋の娘や。そやからスターさんと同じなん
か。黒田社長とか、監督とか、 脚本家が使う宿やから、そやから
利用するんか。 ジョーさん、そんな男やったんか。」
美月の声
「お嬢様は女優にはなれへんのですか?
・・・3つの名前に苦しめられて生きて来たんです。」
「あんとき、ワイかてテグスには気付いたんや。アホンダラ。テグス
切るのはワイの役目やったんや。ワイが切ろう思うたら、、、何と
か言え~~。何で美月助けたんや。」
「晋八、本番は一回だけや。映画は遊びじゃねぇ。あのワンカットに
命かけてるのは、みんなだ。お前だって、そうだろう?
だから、テグス見ても動けなかったんだろ? あいつを助けたんでも何
でもない。くだらねぇ悪戯(いたずら)で映画を壊すヤツを許せねぇだけ
だ。」
「ジョーさん。」(ジョーが大部屋を出ていく。)
美月、部屋で寝ている。
その日、また熱を出した。
杉本さんのことを好きになった君ちゃんと同じやった。おなかの辺りが、
シュワ~とした。
カラスが鳴く夕暮れ。 椿屋にやってきた晋八。
アウォ~~~ アゥアゥ アウォ~~~ アウォ~~~
犬の泣き真似を何度も繰り返す晋八。
美月は晋八だと気づきながら、「あの犬も恋してるんやろか」と
思っていた。
翌朝の椿屋
美月が自分でおにぎりを握っている。お母ちゃま特製弁当は、大部屋先輩
女優の質素なお弁当に比べて豪華すぎて目立ち、いじめられるもとになる。
たん白質も野菜もないと心配するお母ちゃまが、美月のおにぎり弁当に、
特製弁当の二品をさっと添えた。
偶然を装い、晋八が美月と一緒に撮影所へ早めに出勤した。晋八は、美月
が錠島に興味を持っていることを、はっきりと知る。
一緒に大部屋女優の部屋の雑巾がけをしながら話すうち、あの日、なぜ
錠島が大部屋に寝ていたのか、美月も晋八も合点がいった。
そうや、ワイが叩き起こしたんや。
あのアパート、、、あそこに私を置いて、ここへ戻ってきたんや。
晋八は、錠島のことを何も知らない美月に、ジョーについて話して聞
かせた。
トラさんとリキちゃん、ハラカンは大京映画の太秦寮だが、大部屋俳優
と一緒にいるのがイヤなジョーさんだけは、一人別にアパートに住んで
いる。
ジョーさんは、ニューフェースで、スター候補生、大京映画の期待の星
だったから、もとから大部屋の斬られ役だったわけではない。
主演映画の企画も決まっていたけど、映画界が斜陽のため、ジョーさん
の主演映画も突然中止になって、いつの間にか大部屋まで落ちて来た。
もともと、天涯孤独で屈折しとるからなぁ。 天涯孤独?
捨て子やねん。 捨て子、、。
戦後のドサクサに親に捨てられ、それから横浜の施設で育ったらしい
が、先生に反抗して何べんも施設を脱走して、生きるために泥棒まで
して、最後は神戸の少年院や。 少年院、、、。
腹が減って寝るところもないから、パンとか毛布も盗んだ言うとった
な~。
それで 「いいじゃないか、名前が3つもあって。」
けど、映画に惚れ、命を賭けているところ、大部屋の俳優たちとは付
き合わないし、性格も悪そうだけど、映画に対してだけは真っすぐな
ところ・・・ジョーさんには、ワイ一目置いてんねん。 ふ~ん。
社長秘書の関川が、愛子に美月の撮影所での様子を知らせるため、女
部屋を覗いている。5月20日、午前8時、中山晋八と雑巾がけ。か
なり親しそう、、と。
そこへ出社してきた二階堂樹里(去年のニューフェース)が「関川部長」
と近づいてきた。「樹里と呼んで下さい。モーニング珈琲、いかがです?
ご馳走して下さいます?」関川部長は、まるで一瞬で魔法にかかったよう
に、即座に「御意」と・・・。
ジョーさんには、近づかん方がええ。何で?
スター女優しか抱かん言うたらしい。もみじ姉さんも昔ちょっかい出した
けど、相手にもされへんかった。美月助けたのも、映画のためや。あのワ
ンカット、守りたかったんや。美月のためやない。ショックか。
ううん。けど、嬉しかった。
美月の鏡台の前の化粧品が、ことごとく動かないように接着剤で止められ
ていた。何やこれ? 私、いつまでいじめられるんやろ。
ワイが守ったる。テグス切るんは遅れたけど、これからは美月はワイが守
る。
美月、衣裳部屋へ。
町娘3,長屋のおかみ1、女郎1です。
芝居は ” いき ” や。今を通り抜けたら、そこそこ一人前やな。けど、
お前には運がある。初めての役付きでアップ撮ったそうやないか。
え、私がですか?
テストより本番の方がええ役でこれはプロや。日高監督、褒めとったで~。
あれは~
褒められて謙遜するな。この世界で、謙遜は美徳ではない。
衣裳を運んでいる時、ジョーに出会うが、美月は「おはようございます」
のみ。
おウマさんが、美月を呼びに来た。
「吉岡美月、幹 幸太郎先生がお呼びや。至急、お部屋まで来るように。」
「え?やない。さっさとせい。」
「何でオードリーが幸様のお部屋に入れるん?」
「失礼します。吉岡美月、連れて参りました。」
「逃げて~の芝居、良かったで。」「有り難うございます。」
「けど、あれはジョーのおかげやな。ジョーが引き出した芝居や。
「どや、この映画当たると思うか?頭のええオードリーはどう思う?
言うてみい。」「質は高いと思います。」
「俺は当たらへんと思う。」「何でですか?」
「理由はいろいろ スタッフの頭が固い。大胆な発想も、斬新なイ
メージもない。けど何より、幹 幸太郎という素材に、この企画は合
うてへん。お客が俺に求めているのは股旅物やない。ま、他のヤツ
やったらよかったかも知れんけど。」
「それは例えば誰か」の問いに、幸太郎は、「まぁ大京映画の中やった
ら、ジョーかな?」と答えた。
「オードリー、この映画もあとわずか。幸太郎の芝居、しっかり焼き付け
ておけよ。」「はい」
美月が女部屋へ帰る途中、男部屋で本を読んでいるジョーを見かける。
視線を感じてジョーも美月を見るが、二人が言葉を交わすことはなか
った。
美月の鏡台前は、いたずら書きや化粧品が散乱し、荒らされていた。
椿屋にての編集会議
「無頼人パートⅡ」ではな、銀次郎と盃を割った紅花一家との抗争や。オ
モロイで~。出版社も乗り気でな、異例の初版8万部や、8万部。」
「このシリーズで、先生、3年持たせましょう。その間に、新しいスター
の発掘や。」
「ただ今、歌舞伎界、武道界、新劇、はやりのアングラ劇、あらゆるとこ
ろに網を張って調査中でございます。」
「日本映画斜陽の中にあって、大京映画、万々歳やの~」
「しゃ~~」
踏切の音や犬の鳴き声が聞こえる街中。
晋八が鉢巻をし、木刀を差してアパート前に立っている。
もみじ姉さんが、帰って来た。