大 浮 世 絵 展 ~ 江戸東京博物館 ~   ⑤ | 満天の星Lovelyのブログ

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60周年をあれほどに輝かせながら61周年へと繋げていかれた舟木さん、本当にお見事でした!
2023年もこれからもずっと、素晴らしい夢時間を頂けますように・・・。

                   大
 
                      ~ 江戸東京博物館 ~
 
                               ~ 5 ~
 
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                     Ⅴ さらなる展開
 
       喜多川歌麿と東洲斎写楽というスター浮世絵師の活躍した後、浮世絵はさらなる
         展開を見せる。 役者絵と美人画に、風景画が第三のジャンルとして加わり、さらに
         花鳥画・戯画・歴史画・武者絵などと広がっていく。
 
         幕末の浮世絵で傑出した存在感を示した葛飾北斎(1760~1849)の、馴染み深い
         「赤富士」(富岳三十六景 外凱風快晴)に代表される風景版画は、北斎が新たに
         浮世絵に付け加えることになったジャンルである。北斎芸術の特質である巧みな
         構図や圧倒的なデッサン力は、西洋の芸術家たちにも強い影響を与えている。
                                        (参考:図録「大浮世絵展」P157)
 
 
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        〔作品解説〕
 
    葛飾 北斎
    冨嶽三十六景 凱風快晴
   大判錦絵 1枚 ベルリン国立
               アジア美術館  
 
   
    「凱風」とは南風、初夏のそよ風のこと。
   年に何度か富士が見事な朝焼けに染ま
   ることがあるという。黒い山肌が闇の中
   から次第にその輪郭を明らかにし、赤く
   染まったその瞬間を描くものである。
                                                          
 
    いわし雲は動いているようにも見え、劇的な瞬間に向けての時間の移ろいを暗示しているようだが、
    富士は、そうした周囲の時間の推移にはわれ関せずとばかり微動だにしない。早朝の美しい富士山
    の姿を人間などの添え物もなく見事に描ききっている。北斎の作品は一度見たら忘れられないきわ
    めて強い造形を特色とするが、色といい、形といい、その中でも頂点をきわめたもののひとつであろう。
 
    これが朝焼けに染まった富士山、「赤富士」といわれる作品なのか、この赤
   をしっかり目に焼き付けておこう。
 
 
                                                                    
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      〔作品解説〕
 
     冨嶽三十六景
      神奈川沖波裏
    大判錦絵 1枚
    ギメ東洋美術館
 
       〈あの波は爪だ、舟がその爪
    に捕まれている〉(1888年9月
    8日付テオ宛書簡)とゴッホが
    語る図である。沖合いの海を
    進む小船にせり上がった大波
    が襲いかかる。
 
 
     画面右からのうねりの大きな曲線は、波の底から急激にせり上がりながら、波頭へと向かい、砕け
     散る。全ての波はこの動きに呼応し、見るものを巻き込みながら、他依然として動じない富士に収斂
     する。この求心力が本図の最大のポイントであろう。小さな和紙に摺るだけの木版がでどうしてこれ
     ほど偉大な表現ができるのかという感動的な一例である。
 
     一度見たら決して忘れることのできない強烈な印象を与える本図に関心を示した西洋人は、ゴッホ
     などの画家だけではない。ドビュッシーが交響詩「海」の作曲にあたってこの図からインスピレーション
     を得たことも知られている。
 
      神奈川沖合いからの光景・・今の川崎と木更津を結ぶ東京湾アクアライン
    の「海ほたる」あたりが該当するらしい。  なんという迫力!
 
           ともかく、有名な作品だけはちゃんと見ておこう、と「冨岳三十六景」の展示
    作品を進んでいくうちに、あじさいの図を見つけた。
    あじさいは、舟木さんの好きなお花、、葛飾北斎はこんな花鳥画も描く絵師
    だったのだ、と作品を見て初めて知った。
          
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         〔作品解説〕
           紫陽花に燕   大判錦絵1枚  ベルリン国立アジア美術館
 
       横大判の花鳥図は、~~10図が知られている。「冨岳三十六景」などと同じ時期の作品。
       北斎が風景版画ばかりでなく花鳥版画の分野でも同様の質高い作品を生み出していたことを
      よく示す作品群である。いずれも単一の草花をアップで描き、いくつかの図には鳥や昆虫を
      添えている。添えられる生き物はいずれも頭部を下にしたさかさまの状態である。
 
      「紫陽花に燕」はまさにその原則どおり満開の紫陽花に燕が添えられる。
      葉や燕は荒々しい筆触があらわであり、装飾花(萼)をかたどる線は速く的確。彫師の腕もあっ
      てのことであろうが、こんなところにも北斎の力量を見て取ることができるであろう。
                                                                   
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              歌手生活15周年記念
        「愛はまぼろし」
 
         作詞: 石坂 まさを
        作曲: 竜崎 孝路
              昭和52年8月  
 
 
        愛するって悲しくて
       とてもはかないものだわと
       うつむくお前は二十才(はたち)前だった
      そんな背中に黙って 煙草をふかして
      窓にひろがる夜明けを
      見ている俺だった
      あじさいの花が散り 宵待草の匂うころ
      なぜかお前を想い出す
      あの頃に帰りたい                                                                                             
 
      
                                      夢のない身で夢見て くちびる重ねた
                               若い暮らしに疲れて お前は眠ったね
                               あじさいの花が散り 宵待草の匂うころ
                               なぜかお前を想い出す
                               あの頃に帰りたい                                                                                                                                        
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      「あじさいは君の面かげ」
                    
      作詞: 三浦 康照
      作曲: 甲斐 靖文
             昭和49年10月
 
      小雨にけむる 思い出の路
      一つの傘に 肩よせて
      君と歩いた 恋の日よ
      おぼえているかい
      あじさいの花が
      雨にぬれて 咲いていたね
 
 
  (2番)                              (3番)
  たそがれ色が ふたりを包む                並木の路に さみしく消える          
   すべてを俺にささげると                    別れの朝の 君の影
     君の瞳がうるんでた                      俺は心で泣いていた
       忘れはしないよ                         おもいで呼ぶよに
        あじさいの花の                          あじさいの花が
         甘い香り  胸にしみる                      風に吹かれ 散ってゆくよ
 
 
      
       北斎の、複雑な色合いだけどシャープな紫陽花と舟木さんの情感豊か
     な優しいあじさいと。  ゴッホにもドビュッシーにも影響を与えた北斎の
     感性、筆力、技量。                                                            
     
      デビュー後十年を過ぎて、
      「舟木一夫の新しい世界」を求めて模索していた頃の作品たちのなかに
     咲いていた、舟木さんの”あじさいの花”。
     今から思えば、時代を感じさせる歌詞や曲調も含まれてはいるけれど、
     行きつ戻りつ、試行錯誤を繰り返し15周年にたどり着いたときの、舟木
     さんの”あじさいの花”
 
       
        舟木さんの曲を知っていれば、どちらも楽しめてしまう、”一粒で二度 
      美味しい”(グリコのような)お得な「大浮世絵展」になっていく。  
                                         
 
 
                広重の雨・夜・月・風
 
       北斎の影響を受けて、他の絵師も風景画を描くようになったが、歌川広重(1797~
       1858)は、雨・夜・月・風などをたくみに使って情感あふれる懐かしい風景を描きだし
       ている。                         (参考:図録「大浮世絵展」P157)
 
 
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         〔作品解説〕 
    歌川広重
    東海道五拾三次之内
          日本橋 朝之景
    大判錦絵1枚  名古屋市博物館
 
      「東海道五拾三次之内」は歌川広重が
      初めて東海道を描いた全55枚(53の
      宿場風景に江戸と京の2図を加える)
      のシリーズ。彼を名所絵の名手として
      決定づけた代表作であり、街道画の決
      定版といえる作品である。
 
       その第1図は、東海道の起点である江戸日本橋の早朝風景から始まる。橋の左に高札場(こうさつば)
       が見えるので、日本橋を南から眺めた光景だと分かる。大名行列の一行が日本橋を渡って
     続々と姿を現す瞬間と、近くの魚河岸から魚を仕入れたばかりの棒手振り(ぼてふり)たちが
     市中に売りに出かけるところが捉えられている。
     近景左右に木戸を描き入れることで遠近感を演出しつつ、旅の幕開けを示唆する。
     シリーズのスタートを切る作品としてもふさわしい図となっている。
 
 
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一心太助も、魚河岸から魚を仕入れ、日本橋からお殿様のお屋敷へ
新鮮な魚を届けていた。 
 
 「日本橋」は五十三次の(始)であり、シリーズ
 NO. 1 は  品川 日の出
 NO.53 は  大津 走井茶店
  (終)は  京都 三條大橋  
  というわけで、五十三次の作品は全55枚と
 なる。
 
 
                                    雨
 
 
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        〔作品解説〕 
 
    東海道五拾三次之内
      庄野 白雨 
    大判錦絵 1枚
    名古屋市博物館
   
     副題の「白雨」は夕立のこと。
     空がにわかにかき曇り、ざぁっ
     と降り出した雨に慌てて駆け
     出す人々を描く。
     駕籠の多いが風でめくれあが
     り、揺れに耐える乗客のこぶし
     がのぞく。
 
 
     坂を駆け下りる男の傘には「竹のうち」「五十三次」との文字が摺り込まれ、当シリーズ名と版元を
     宣伝する(版元は竹内孫八)。
     鍬をかついだ農民は身をかがめ、風雨に負けまいと笠を右手で押さえる。
     坂道、竹藪のシルエット、雨をそれぞれ斜めに組み合わせることで画面に不安定さを生じさせている。
     賞の葉江戸から45番目の宿場であり現在の三重県鈴鹿市にあたるが、図中に特定の場所を表す
     指標は何もない。しかし、そのようなことが気にならないほど、夕立の劇的な一瞬をとらえた傑作で
           ある。
       
                           夜・月・風
 
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            木曽海道六拾九次之内 三拾弐  洗馬(せば)
                 大判錦絵1枚  中山道広重美術館
 
             「木曽海道六拾九次之内」は渓斎英泉(けいさいえいせん)の描いた同じ木曽街道
             シリーズで、途中から広重が引き継ぎ完成させたもの。
 
      〔作品解説
     洗馬は江戸から31番目の宿場(現:長野県塩尻市)。本図で描かれるのは、かすかに夕焼
     けが残る空に満月が昇りかけた頃合いの奈良井川であろうか。
     雲を薄墨、藍、朱で丁寧に摺り重ねて刻々と移り変わる空を表している。
     満月に柳の枝が掛かっている情景も詩情をそそる。 
     シリーズ中でも、ひときわ広重画の特質である叙情性を伝えてくれる名作であり、柳や蘆(あし)
        のそよぐ音に交じって舟を漕ぐ櫓(ろ)の音までも聞こえてくるようだ。
 
      この作品は残念なことに、写楽の「江戸兵衛」と同じく展示替えのため数日
     の差で見られなかった。しかし、広重画の特質が詩情や情感の溢れる叙情
     性ということなら、子供の頃に目にし、耳にしてきた風景に一番近いところ 
     にある作品のような気がしてきた。
       原画はもう少し暗いトーンだと思われるのだが、街道筋の人々の暮らしの
     風景を、北斎とはまた違った景色の中で見せてもらえるようだ。
 
 
            風が出てきた。
        柳も蘆も川風にいっせいになびく。、西の空にかすかに残る夕焼け。
          しだれ柳の枝の向こうに、もう満月が顔を出してきた。
          満月の夜でも、やがて夜の帳は下りてくるだろう。
          一日の労働の終わり。ひと日の終わり。夕餉の待つ我が家へ、後もう一漕ぎ。
 
     
             人々の暮らしと夜・月・風に抒情があふれているこの作品は、”流行歌の
     世界”にも一脈通じる叙情性があるように思えた。
     どうしても昔教わった、『「東海道五十三次」の「安藤広重」』というイメージ
     だけで見てしまうのだが、『詩的な情趣で日本の風景を繊細に描いていく
     幕末の浮世絵師「歌川広重」』として作品を拝見しなくては、と思ったもの 
     だった。     
       
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       この後も浮世絵は様々に意匠を凝らし、
   新たなるステージへと表現の世界を広げ
   ていったが、 このあたりの展示までで充分
   に江戸の人々の、沸きあがる進取のエネル
   ギー と繊細な情趣を身に浴びて楽しんで
   来れた。名古屋市立博物館でも「大浮世
      絵展」が始まったようである。
 
 
      帰宅して封書用に切手をひっくり返してい 
   たら、「浮世絵切手・第1集」が出てきた。
 
   個々には印刷の字が小さくて読み取れない
   のだが、これでも小さな浮世絵展としては充
   分に楽しめる。
   すっかり忘れていたが(本当に良く忘れる)、
   ほ~ら、昔も「浮世絵」を見過ごしはしなかっ
   たよと、自分自身によしよし、と言ってみた。