シアターコンサート・千秋楽
夜の部より ~ 2 ~
「WHITE」シリーズを聴いていく中で、まったく知らない舟木さんの
世界に遭遇した思いがした曲は「れんげ草」であり、その極めつけは
「夢幻ーMUGEN」だった。その2曲ともが、今回続けてステージに乗った。
♪ れんげ草
作詞・曲: 上田 成幸
♪ 愛する人の胸で
夜明けの雲をみたい
まるで初恋の 少女のように願う
恋手紙(こいぶみ)のひとつさえ
書けぬまま
い・の・ちを花びらに ♪ あなたがもしも・・・もしも
宿せるものならば ふりむく時が来たら
あなたのふるさとの かたく瞳(め)をとじて そっと髪をほぐし
小さな れんげ草 美しく見えるよう
祈るだけ
~ ~ ~ ~ ~
~ ~ ~ ~ ~
い・の・ちを花びらに
宿せるものならば
あなたの夢に咲く
ほのかな れんげ草
密着写真集『華』ロングインタビューのなかで、
舟木さんは自作の女歌について、”写真のネガ
だといわれている。 (P110~111)
---ネガ・・・。
「反転しているという。だから男の世界では表現できない世界。そういう
部分を、女性の言葉を借りて、女性の世界で書く。『れんげ草』もそうだ
しね。」
なるほど、舟木さんにとって、あるいは男性にとってネガで表現した男性の
世界かも知れないのだが、これは女性の世界として素直に受け取れてしまう。
受け取りたい、という願望もある。
” 愛する人の胸で夜明けの雲を見たい ” という、” まるで初恋の少女の
よう ” な願い。
初恋の少女でなくたって、こう願うだろうに、舟木さんにこう書かれると、
一瞬で誰でもが美しい世界の住人になっていく。
恋手紙は こいぶみ。
そしてヒロインは ”こいぶみのひとつさえ書けぬまま”である。
さまざまな想いを起こさせる ” こいぶみ ”
私たちは、つい最近まで、手紙にしたためて想いを伝えてきた。
人を恋うる想いはそれぞれの人生を変え、文学も絵も音楽も・・芸術をも創り、
そして歴史までも変えてきた。
” 恋手紙 ” を ” こいぶみ ” と読ませる、 ” 恋文 ” を ” 恋手紙 ” とする
舟木さんの拘り。
これこそ一つ一つの言葉に対する舟木さんの、愛情ゆえの深い拘りに
違いない。
まさしく、恋文は恋手紙だったのだから。
今は・・・舟木一夫を恋するたくさんの人たちが、ブログでせっせと
ラブレターをしたためる。これも現代流 ” こいぶみ ” に違いないだろう。
舟木さんはこの「れんげ草」について、川端康成「踊り子」のヒロイン、薫
をイメージして、、と話されたことがあったと聞く。
一番の歌詞ならそうかも知れない、と思うのだが、2番の歌詞になると、
やはりもう少し上の大人の女性を思い浮かべてしまう。
「れんげ草」のヒロインは、まだ恋する人に振り向いて貰ってはいないよう
である。
”想い人”の長い指が、この艶々とした髪に触れられて来る時を、祈るように
瞳さえ閉じてヒロインは待っている。
ふるさとの、一面のれんげ畑にあなたは遊ぶ。
れんげ草に埋もれて、あなたは夢を見る。
わたしのい・の・ちが小さな花びらに托せるものならば、あなたが寝転ぶ
ふるさとのれんげ草となって咲いていたい。
あなたの夢の中のれんげ草にさえなって、わたしのい・の・ちを咲かせて
いたい、、。
女性なら、「れんげ草」の中で、みんなこのヒロインになっていることだろう。
美しく長い髪の女性なら、なおのこと手入れもおさおさ怠りなく、、、。
「『WHITE』系の歌は、アルバムに入っているかどうかは別にして、、、
~~年月が経つほど響く歌になっていくと思える、、、。」
(密着写真集「華」P110)
やはり今こそ「WHITE」をたっぷり
聴かせて頂きたいと思う。
「れんげ草」が、「WHITEスペシャル
セレクション」に収録されていないのが
とても残念である。
演舞場でのあの声を耳に蘇らせながらも、
舟木さんのあの眼差しに会いたい
ばかりに、やはり又してもこのDVDを
拝見するのである。