それぞれの 『花の生涯』 ~2~ | 満天の星Lovelyのブログ

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60周年をあれほどに輝かせながら61周年へと繋げていかれた舟木さん、本当にお見事でした!
2023年もこれからもずっと、素晴らしい夢時間を頂けますように・・・。

                         それぞれの 『花の生涯』  
                   
                   ~ 2
 
 
 
                   【 村山 たか 】
 
  
     井伊直弼と長野主膳の固い絆の間に介在する、才色兼備の女性。
    幕末の嵐を恋とともに駆け抜け、影で時局に絡み、明治の世まで
    生き抜いた数奇な人生。
 
 
    今回の舟木さんの舞台では、たか女は、直弼と主膳の二人で見る夢の
    実現のために、ひたすら尽力する強く美しい女性として描かれていた。
    直弼と主膳の固い結びつきと夢の織りなす幕末ロマンの時代絵巻。
    たか女もまた、時代の嵐を心のままに生きようとした女性であった。
 
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    誰のためでもなく、桜(はな)は、
    桜(はな)である証を求めて凛と
    咲く・・
 
 
    葉山さんの”村山たか”は、凛と
    した気品が全身に溢れる、惚れ
    惚れするくらい見事な”たか”で
    あった。
 
 
 
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          舞台は舞台として、、
 
 
   
 
 
     
          
 
     当代一流の男性を、二人ながらに惹き付けるたか女の魅力は、単に美貌
     とか教養のみでは説明がつかないように思っていた。
     もっと底知れぬ凄みを帯びて、抗うことなく吸い寄せられていく妖しいも
     のがあるような、、、それは ” 魔性 ” といわれるものだろうか。   
     
 
     たとえ ” 魔性の女 ” だとしても、直弼と主膳という、こちらもあらゆる面で
     抜きん出ている超一流の殿方の、二人ともの心を捉えて離さないその
     妖しい魅力はどこから来ているのか。
 
 
     舟橋聖一氏の原作でも、たか女の魅力の源だけはどうにも掴めなかった。
 
 
     ところが、たか女を主人公にした歴史小説、諸田玲子氏の「奸婦にあらず」
     (第26回新田次郎文学賞受賞作品)を読んで、ものの見事にたか女の
     魔性ともいうべき魅力が、すとんと腑に落ちた。                 
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     そうか、そうだったのか、と。
 
     新田次郎文学賞は、新田次郎氏を顕彰して、事実を材に取った
      優れた文学作品に贈られ、歴史小説はこの範疇に入る。
      不明の部分は作家の想像力で構築していくが、あくまで史実が
      元になる。
    
 
     諸田氏は、たか女を多賀大社の坊人” 女の忍び ”
           として描いたのだ。
 
     たか女は、わが国屈指の古社の一つ、近江国多賀大社院主という身分
     ある僧を父とし、多賀大社でひそかに ” 坊人 ” (諜報機関を担う人)として
           育られたのだと。
 
 
     多賀大社は、坊人の活躍によって武家から庶民まで多くの信者を集め、
      幾多の兵乱や政変にも左右されることなく格を保ち続けて近代に至った。
      常に朝廷側と武家側の情報を集め、両者の融和に留意しつつ、進むべき道を誤ら
      なかったからこそ、栄枯盛衰の歴史を刻むことがなかったのだという。                                                             
                                                                                                          (巻末解説より)
 
 
              それゆえ、たか女は朝廷や武家に出入りできるだけのあらゆる教養、
      作法、風趣の道とともに、” 忍び ” としての訓練を受けていた。
 
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    井伊家に奉公し直弼に近づいたのも、情報を得る為であった。
     
      ところが手練手管を身につけているはずのたか女が、坊人であることを
         忘れ、直弼の虜になってしまった。
    このときからたか女の、図らずも歴史の裏舞台で時局にかかわっていく、
    波乱生涯が始まっていく。
 
 
    埋木舎で出会った六つも歳下の ” 若君はん ” が、よもやのことに彦根藩
         主となり、大老にまでのぼり詰めて、実質的に日本のリーダーとなったから
    である。
    主膳ともまた、言い表しがたい愛情で結ばれていった。
 
 
    直弼を想うあまりに、主膳とともに ” 新しい日の本の夜明けの夢 ” を
    見ようとしたたか女。 彼女の働きは ” 密偵 ” といわれるものとなる。
    激動の時代を自らの心のままに生きた結果は、ついには直弼も、主膳も、
    息子をも、愛するものすべてを失うという悲劇となった
 
 
    たか女は捕らえられたが、命永らえ、洛外一乗寺にある金福寺で妙寿尼
    として、静かに ” 夢のむくろ ” を弔う日々が続いていった。
      年号が明治に変わって9年も経つまで。67歳になっていた。
 
 
    
      平成23(2011)年、京都市東山区・井伊美術館で、直弼からたか女へ
    宛てた恋文が見つかった。藩の反対で会えなくなった時の辛さが綴って
    あるらしい。二人が出会ったのは、直弼29歳、たか女35歳の頃。
 
 
    あれは萩の花の咲く季節だった。直弼はその日、はじめてたかに会った。
     白い顔は白萩を想わせる。それでいて地味ないでたちながら紅萩にも勝る華やかさを
     秘めていた。楚々とした風情も風になびく萩のよう、艶めいた眸(め)が、陽光にきらめく
           花びらのように躍っていた。                    (「奸婦にあらず」より)                 イメージ 6
    
    
 
 
 
 
 
 
 
 
    
    
 
 
    
        ままならぬ恋に落ちて
     いく直弼とたか女。
 
 
 
     たか女さま、主膳様への想いは如何いたしましょう。
     直弼様を生涯想い続けたあなたの心の中で、主膳様にはどのような
     ポジションを用意していただけますか。
 
 
       あの頃は夢中だった。直弼のため主膳のために働くことがすべてだったのだ。  (同)
         
 
 
      というたか女さまですのに、、、。
      主膳先生は不思議なお方ですが、たか女さまの本心は、やはり直弼様
      にのみおありだったのでしょうか。  
      それとも、たか女さまにも説明がつかないものが、、?
 
    
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      美しさも極まると、まるでその中に吸い込まれていくように感じる。
      妖しさに、魂が抜かれていくようだ。
      
      妖しいほどの美しさで、二人の男に夢を語らせ、心を奪っていった
      たか女。彼女の命を助けたものは、たとえ”忍び”であろうとなかろうと、
      捕らわれの身になってなお放たれていた、凛とした気品であったという。
 
 
      たか女の(はな)は夜桜。
      夜桜のように妖しく華麗に人を惹きつけて、たか女は見事に彼女の
      『 花の生涯 』 を閉じていった。