春の陽気が心地よい週末。妻を助手席に乗せ、いつものイオンモールへと車を走らせた。
妻と過ごす穏やかな買い物の時間は、俺にとって何より大切なひとときだ。
日常の用事をスマートに済ませて建物を後にすると、ふいにエキゾチックなスパイスの香りが風に乗って漂ってきた。視線の先には、色鮮やかな「台湾フェア」の会場が陣取っている。
会場の入口へ向かうと、そこには色とりどりのランタンで彩られた巨大な門がそびえ立っていた。
提灯の光が幻想的に照らし出されるその様は、まるで映画のワンシーン、あるいは、いつか二人で訪れてみたいと思っていた台湾の「九份」の古い街並みを彷彿とさせる。
その予期せぬ極彩色の歓迎に、隣を歩く妻も「きれい…」と、楽しげに目を細めて見入っていた。
立ちこめる湯気と活気、そして妻の嬉しそうな笑顔。今は節約とダイエットという厳しいルールを己に課している俺だが、この完璧なシチュエーションを前にしては、一時休戦のサインを出すほかない。
二人で楽しげにメニューを眺め、今回は「小籠包」と「台湾紅茶」をチョイスした。
休憩所の椅子に隣同士で腰を下ろし、まずは台湾紅茶で喉を潤す。
甘い歓迎を予想していた俺だが、グラスの中の液体は思いのほかビターで、凛とした大人の渋みを持っていた。
だが、そのキレのある本格的な苦味が心地いい。妻と顔を見合わせ、その意外な味わいに思わず笑い合った。
続いて本命の小籠包だ。極薄の皮を慎重にレンゲに乗せ、そっと口へ運ぶ。
その瞬間、熱々で豊潤なスープがあふれ出し、肉の旨味が口いっぱいに広がった。
完璧な仕事だ。
気の利いたセリフを探す必要はない。
隣で美味しそうに微笑む妻の表情が、この選択の大正解を物語っていた。
ふと見やれば、魯肉飯や海老春巻きが「俺たちを忘れるな」とばかりに魅力的な湯気を立てている。
胃袋はまだ先を求めていたが、野暮な真似はよそう。
フェアの期間は5月31日まで残されている。
「また一緒に来よう」。九份のようなランタンの灯りに照らされながら俺が言うと、妻は嬉しそうに頷いた。
台湾グルメとの魅力的な続きは、次の休日のお楽しみというわけだ。




