見上げれば、吸い込まれそうなほどに澄み渡った群馬の青空。


そこには、誰かが定規で引いたかのような、真っ直ぐで潔い白線が一本、鮮やかに刻まれていました。

​飛行機雲。

それは、遠く離れた街へと向かう旅人の鼓動であり、空という巨大なキャンバスに描かれた、一瞬の芸術でもあります。

​見つめている間にも、鋭かったその輪郭は、ゆっくりと淡い真綿のように解(ほど)けていきます。

まるで、私たちの記憶が時の経過とともに、角が取れて優しい色彩へと変わっていく過程を見せられているようです。

​ふと、恩師がかつて綴られた「空」への瑞々しい眼差しを思い出します。

広大な天空を自在に駆ける一筋の光跡は、どんな困難をも突き抜けて前進し続ける、人間の不屈の意志のようにも見えないでしょうか。

​「あの雲の先には、どんな出会いが待っているのだろう」

「この白線は、どこか遠くの街の、誰かの希望に繋がっているのだろうか」

​足元のアスファルトを離れ、ほんの数秒、視線を空に預けるだけで、日々の喧騒で強張っていた心が、ふわりと軽くなるのを感じます。

​消えてしまうからこそ、愛おしい。

形を留めないからこそ、美しい。

​今日、私が見上げたこの一筋の軌跡が、明日への確かな「道しるべ」に思えてならないのです。