新しい職場から北の山々がよく見える。
なかなか素晴らしい眺望で、仕事の合間に少し眺めたりもする。
今頃は山が萌黄色に染まりつつあるので、そうした移ろいを毎日眺めるだけでもなかなか面白く、何よりその美しさに感動する。
感動するのにあらかじめ構えら必要はない。
何かを当てにして感動しようとしてもきっと半減するだろう。
自然の美しさは、多くの場合、我々を良い意味で裏切ってくれるのだ。
こんなに近くにある山なのに、季節の移ろいとその変化に富んだ美しさを正面から知ろうとなかった自分に未熟さを感じた。
ただ、これから一つでも多くの感動を、できる限り無防備に受け止めたいから、むしろ無知で未熟なままでいたいという気持ちもどこかにある。
これだけ春にまみれて、春に身を沈めているのに、春を知らない私の愚かさ。
万愚節にそれらをすべてかなぐり捨てたばかりなのに、今日も春を春らしく受け止めるために、もう少し愚かになりたいと願う日々である。