子供の頃の思い出について時々考えてみることがある。

私は子供の頃から夢想家で現実と空想の世界を行き来しているような所があった。

しかし、夜になると不安をよく感じていたのを覚えている。決まって悪夢を見ていたからだ。

夢の世界から脱出できずに現実世界に帰れないのではないか。そんな不安ばかり抱えているような子供であった。

その頃は虚弱体質でよく風邪を引いては休んでばかりいたので、ろくに幼稚園に通えないまま卒園してしまった感じだ。

やがて小学校へ通い始めると、途中にある神社脇の細道を通るのが怖くてならなかった。

昼間でも薄暗くジメジメしたような細道で両側はともに垣根と板塀で張り巡らされていた。

北側の垣根はそろばん塾の敷地で、庭の手入れが悪く八つ手が生え放題になっていて、雑草が道側にはみ出していた。

かたや南側は板塀になっていて、昔は朱色に塗られていたようであったが、長い年月の中で色褪せており、所々穴が開いている箇所もあった。

板塀の向こう側には篠竹が鬱蒼と茂っており、その先を視認する事は難しかったが、子供達の噂話によれば、空き地になっていて更に先に気味の悪い三階建ての建物があるという事であった。

その敷地は小学校前の通りからは少し奥まった場所にあり、先ほどの細道に面する場所は朱色の板塀で囲まれている。また、神社との境界は高いブロック塀で仕切られていたので、どこから敷地に入ればいいのか全く分からなかったのである。

また建物があるとされる箇所には高い木立が林を作っていたので周囲からその建物を確認する事は難しかったのである。

こうした不思議な場所が小学校から近い場所にあると言うのは、子供たちにとっては格好の好奇心の対象だったのである。

「蛾のマンション」とは、その板塀で囲まれた敷地に建っていると言われる謎の建物の名前である。

子供達はみな蛾のマンションと呼んでいたが、実際に敷地の中に踏み入れたものはいなかった。

しかし様々な噂だけは沢山出てきたのである。

そのマンションはお化け屋敷で、中に入ると幽霊が居ると言う噂である。

つづく