板門店で開催された南北首脳会談。
11年ぶり3回目の首脳会談であるが、金正恩体制としては初の会談であり、南北軍事国境線に跨る板門店で開催されるという意味でも異例づくめの会談であると言える。
とくに国境線を挟んで両首脳が笑顔で握手し、金委員長が韓国側へ一歩踏み込み、今度は金委員長が文在寅大統領の手を握りながら北朝鮮側へと招き入れるというシーンは、まさに南北朝鮮の人々にとっては感慨深いものがあったのではないだろうか。
今年に入ってからの北朝鮮の方針転換には眼を見張るものがあるが、昨年まで日本列島の頭ごなしにミサイルを飛ばしていた国が今や韓国大統領と和やかに会談するまでになったのだから利害関係国の高官たちも戸惑いを隠し切れないのが本音だろう。
金大中、盧武鉉といった太陽政策推進派の系譜を受け継いだ文在寅大統領としては、今回の南北首脳会談実現はまさに悲願達成であり、公約を果たした事にもなる。
戦争ともなれば一番被害を被るのは韓国であり、自国の平和を守るという意味においても金委員長との融和政策は理に適った政策であると言える。
しかし、北朝鮮の態度はこれまでもコロコロ変わり続けており、北が再び好戦的になった場合を想定した計画も水面下で進めていく必要はある。
6月にはアメリカのトランプ大統領との会談も予定されているが、今回の南北首脳会談は金正恩委員長にとって自分が寛大で理知的な側面がある事を国際社会にアピールする意味でまたとない機会となった。
文在寅大統領もその点は織り込み済みであり、北朝鮮をまずは国際舞台の風に当たらせる事により、身勝手な行動をみずから抑制する術を学べるようお膳立てしているのだろう。
ところで、日本も北朝鮮と利害関係国にある以上は、この波に乗り遅れるべきではない。
日本にとって最大の懸案事項である拉致問題。
これまで断続的に北朝鮮と交渉してきたが、小泉政権以降は目ぼしい成果が上がっておらず、被害者家族の高齢化と相俟っていよいよ危機的状況となっている。
対話の窓が常に開いていないのが北朝鮮外交の特質である。
日本側がいくら秋波を送ったり逆に制裁を強化しても北朝鮮のタイミングで対話の窓がすべて開閉するのだからその仕組みは嫌が応にも知らなければならないのだ。
今、南北首脳会談が実現し、今後史上初の米朝首脳会談が実現しようとする時期に日本が何もしなければ拉致問題解決の可能性は完全に閉ざされる事になるだろう。
ただでさえ安倍内閣の支持率が急落し続ける中で、起死回生のチャンスがあるとするならば拉致問題解決のために安倍総理自身が金正恩委員長と対話して大きな収穫を得る以外に方法はないと思う。
ふたたび平壌に飛ぶくらいの覚悟は持って欲しいものである。
