北朝鮮で36年ぶりに開催された朝鮮労働党大会。9日に閉幕したものの、今回の大会の意義を分析することはなかなか難しいことのように思われる。

たとえば、金正恩第1書記が新たなポストである党委員長に就任することになったが、これをもってそれが何を意味するのか正確に分析することは諸外国の当局者にとっては甚だ困難な事のように思われる。

党大会では、この他にも核保有国である事の宣言がなされた。そして、それは自国を守る為の手段であり、北朝鮮の方から核ミサイルを発射することはないと明言していたが、実際はどうなのだろうか?

このように、党大会の表層的な字面を追っているだけではなかなか深層に肉薄できそうにない。そして、それは北朝鮮首脳部の意図しているところであり、平壌市内に設けられたプレスセンターに連日詰めている外国人記者をたびたび煙に巻いてきたわけである。

いずれにしても、金正恩第1書記は党大会を通じて独自色を内外にアピールし、今後も自身を中心とする体制を盤石なものにしていきたいという姿勢を明確に打ち出してきたように思われる。

そして、今回の党大会で俄然注目されたのが金正恩第1書記の実妹である金与正氏の存在感である。

血を分けたただ一人の妹である与正氏に金正恩第1書記は全幅の信頼を寄せている事は確かである。

そして、こうした兄の期待に応えるべく与正氏も党大会において兄の陰で支える為に裏方として奔走していたとされる。

妻の李雪主氏が子育ての為に家庭に入ったようであり、今後は政務における女房役は妹の与正氏に変わりそうだ。

金正恩第1書記は、最近では核開発のみならず、経済政策にも力を入れているようであり、経済成長において一定の成果が出ている事が今回の党大会開催に結びついたと分析する専門家もいる。

そうなれば、最大の貿易相手国である中国との関係もより修復されるかもしれないし、更には外貨獲得の為、より積極的な貿易を試みる方向にシフトしていくのかもしれない。

一方、米国や韓国との関係においては、新たな動きが出る予兆は今の所見られない。ミサイル発射の挑発行為も当面は続きそうである。

日本においては、切れるカードはすべて出し尽くされた感があり、拉致問題の状況打開のためにどのような手を打つのか、安倍政権に注目していかなければならない。

今の所は締め上げの方向にネジが向いているが、場合のよっては再びネジを緩める必要もある。

そのタイミングを測るためには、日本側から新しいアクションを起こしていかなければならない。

私としては、閣僚経験者の訪朝もありではないかと考えている。少なくとも、そのレベルの動きが無ければ拉致問題は全く動かなくなり、北側が忘却戦術を取り始めたら手遅れになってしまう。

それだけに早く打開していく必要があると思うし、日本政府がより大胆な行動をとってくれることを只管願い続けていくしかないだろう。