先週の土曜日(10月1日)に、六本木の国立新美術館で開催されている「モダン・アート,アメリカン」展を観てきました。この展覧会は、近現代アートの世界的な蒐集家として知られるダンカン・フィリップス氏のコレクションをとおして、アメリカ・モダンアートの軌跡を辿るというものである。


展示が始まって最初の土曜日だというのに、想定したよりも客の入りはまばらであったが、鑑賞する上ではむしろ歓迎すべきことである。


作品は19世紀後期のものから、20世紀中盤ぐらいのものまでで、僅か100年足らずでここまでアートの潮流が変化し拡がりを見せた事は、まさに驚きであった。


自然主義の風景画から始まって、印象派絵画、キュビズム、フォービズム、ポップアートから抽象絵画まで、太陽系のあらゆる宇宙現象を目の当たりにしたって、これだけの変化を一度に拝む事は難しいであろう。


失礼な話であるが、私を含めて観覧者の多くは、ただ漫然と絵画を観ているだけだから、何ら精神的な動揺を受けずに美術館を出ることが出来たのだと思う。これが仮に、感受性が強く、この絵画群の本質をすべて見極めようとする奇特な人間がこの展覧会を見に行ったら、おそらく出口に達する前に発狂しただろうと思う。そんだけ、目まぐるしい世界が限られた空間の中に存在している。何億光年の宇宙の旅を疑似体験したいなら、まずこの展覧会に行くべし、と言ってやりたい。


この展覧会での私のお気に入りはエドワード・ホッパーの「日曜日」である。20世紀を代表するリアリズムの画家として知られるホッパーだが、都会で生きる様々な人間の姿を描き出すのが非常にうまい画家である。この「日曜日」とう作品は、日曜の昼下がり、肉体労働者風情の男が、商店入口の階段に座り込んで葉巻を一本吸っているという、まさにこれだけの作品である。確かに「これだけ」の作品なのだが、この男の姿に何故か「哀愁」を感じるのである。都会の片隅で、誰にも気に留められる事もなく、哀愁を漂わせながら、葉巻を一本吸っているこの「男」。絵の中の人間という虚像を通して、自分という実像に反射してきた「釣り針のようなもの」が心に引っかかって来て離さないでいる、まさにそういう心持ちがした。


下の絵は、エドワード・ホッパーが描いた「ナイト・ホークス」という有名な作品である。「ナイト・ホークス」とは、夜更かしをして眠らない人々を指すのだという。都会の片隅にある深夜営業の食堂で、1組とカップルと1人の男性が座っているという、まさに「それだけ」の作品なのだが、やはりこの作品も何らかしらの「ストーリー」を感じてしまう(ちなみにこの作品は出展されていない)。




マンテカのブログ-ナイトホークス