致知 2024年9 月号 貫くものを 24226
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致知 2024年9 月号 貫くものを
先人たちの技と心が教えてくれるもの
小川三夫(鵤工舎 総棟梁)
粟田純德(第十五代目穴太衆頭/粟田建設社長)
が特に良い。
小川 しかしいま思えば、棟梁と 一緒にいる、
生活を共にしていたことでたくさんのことが身についたなと思っています。
例えば、食事でも、棟梁はご飯、汁、菜と順番にぴったり食べるんです。
またお代わりする時は、作法として全部食べてはいけない。
必ず一ロご飯を残してからお代わりをする。
その他にも棟梁の何氣ない仕草から、
ああ、これはこうやればいいんだって自然に体で覚えていきました。
居て学ぶというか、そこに何の理屈も要りませんでした。
栗田 本当におっしゃる通りで、 師と同じ時間を共にすることで
学べることはとても多いですね。
小川 だから、一九九五年に棟梁が八十七歳で亡くなった時、
記者の人に「西岡さんはどういう方でしたか」と
いろいろ質問されたのですが、ほとんど思い出せなかったんですよ。
要するに、それだけ西岡常一と自分という存在が
一体になっていたということです。
師匠について、「ああだった、 こうだった」と
いろいろ言えるようではまだまだで、
師と自分が一体になり切ってしまうところまでいかなければ、
本当の修業ではないし、弟子ではないと思います。
丸紅での新人時代を思い出す。
その時の課長やインストラクターに
いかに厳しく温かく育てて頂いたか、
感謝の念が改めて湧いてくる。
未だに可愛がって頂いているが
お二人のことを客観的に語れる自分は、
小川三夫さんのお話をうかがい、
まだまだだな、と思う。