評伝 小室直樹(上):学問と酒と猫を愛した過激な天才/村上篤直 22308 | 年間365冊×今年20年目 合氣道場主 兼 投資会社・コンサル会社 オーナー社長 兼 グロービス経営大学院准教授による読書日記

評伝 小室直樹(上):学問と酒と猫を愛した過激な天才/村上篤直 22308

 

★★★★★

700頁超の分厚さに氣おされてしばらく「積読」だったが、

読み始めると一氣。

天才小室直樹先生の息遣いが聞こえる様。

 

あとがきに小室直樹先生とはどのような存在だったのか?

が端的に評されているところがある。

 

 「全くそのとおりです。

  私のことを「ウルトラ近代主義者である」とか

  「ウルトラ科学者である」とかいう人間がいるが、

  全くわかっていない。

  人間が過剰に合理的であろ うとするのは、

  過剰に論理的であろうとするのは、

  過剰に近代的であろうとするのは、

  合理的でも、論理的でも、近代的でもない、

  不条理な感情があるからに決まっている。

  それを人は「情熱」と呼んでいるはずだ。

  自分がフルブライトでアメリカに行った理由も、

  もう一度、アメリカと戦争をしたときには、

  アメリカに圧勝したいがためである。

  そのためには、アメリカよりもアメリカを知らねばならない。

  岡倉天心がそういっていたでしょう」

 小室は断食によりトランス状態になり、

 ひらめき、霊感を得た。

 普通ではみえない何かをみたのだ。

 もし、そういう超常的な体験をした経験がなければ、

 毎年、小室が断食を繰り返すことはなかったろう。
 また、インスタントにアルコールに溺れながら、

 過剰さを爆発させ、その境地に遊んだ のであろう。

 

 かつて皇国日本が滅びるのを目の当たりにした

 軍国少年・小室直樹は、己が手による皇国日本の復活を誓い、

 そのままに生きた。
 見た目は乞食同然であっても、その内面は誇り高き英雄だった。
 小室は忠実なる天皇教徒、天皇を中心とした日本につかえる

 烈士、義士であった。

 

小室直樹先生の本は多数拝読しているが、

難しいことをこれほを分かりやすく教えて下さるとは

どれほどの天才なのだろう?と昔から思っていたが、

この本で知ったのは「著書の最後のひらめき」を得るために

断食を続け餓死寸前で救急車で運ばれるような、

「求道者」だったということを知ることが出来た。

まさに生死を掛けた探求だったのだと。