清んだ風が暑気を払ってすっかり秋めいてきましたね。
落ち葉が音を立てて舞い散るとメランコリックな気分になりますが、愁いという字が秋の心と書く如くこれは秋における日本人の普遍的な心情なのでしょう。
僕はといえば相変わらず光るものを集めたり花の蜜を運んだりして元気に暮らしています。
そしてよくもまぁ飽きもせず鳥居みゆきや椎名林檎の切り取られた日常を眺めたり聴いたりして愉しんでいます。
救急車で思い出しましたが最近僕はひげを剃りました。
横着物の僕は顔面を放置プレイしていたのですが、内田百閒の『髭』という随筆に「生やしていた髭をある日剃り落としたところ俄かに残忍酷薄な相好になった」というようなことが記してあったのを思い出し、これはひとつその残忍な容貌とやらになって皆をおどかしてやろうと思い立ったのです。
というわけである朝風呂場でひげを剃り落としてから出勤したところ、誰一人変化に気づいてくれませんでした。
或いは気がついたとしても敢えてコメントするほどの変化ではなかったのかもしれません。
毎日会っている家族ですら「さっぱりしたね」と言われたときにはすでに2日が経っていました。
誰も僕の顔などに関心がないことがわかってがっかりしたのでひげを剃った僕の顔写真を載せておきます。
ひげを剃る話といえば志賀直哉の『剃刀』という短編も僕の大好きな作品です。
うたた寝の間に辰床の剃刀で一息に咽を掻き切られたらさぞ気味好いだろうと思います。
話は変わりますがメランコリーという言葉は「黒い胆汁」に由来している言葉なんですって。
古代医学では黒胆汁が多い人は憂鬱質とされていたそうです。
この週末で僕の大好きな鳥居さんのレギュラー番組が2つも終わってしまったから今まさに黒胆汁まみれですよ。