無血革命-池袋演芸場


先日鳥居ようちえんのイベントとミッドタウンの展覧会に行きましたが、あともうひとつ池袋演芸場に行きました。


僕は落語が好きですので浅草演芸ホールの定席に幾度か足を運んだことがあるのですが、高座にのぼる落語家の何人かは池袋演芸場の狭さを笑いのネタにしていて、どのくらい狭いものなのかいっぺん確かめてみたかったのです。


池袋演芸場で色物のマジシャンが観客の一人を手伝いのために舞台に上げると客席に一人も人がいなくなる、と冷やかす落語家もいました。演者と客がマンツーマンのことも珍しくないというので、一体その演芸場の経営は大丈夫なのかしらと行く前から心配していました。


たまたま鳥居ようちえんのイベントが池袋だったのでこれは好都合と思い、イベントが始まるずいぶん前に池袋に降り立ち演芸場を探すと意外にも新しいきれいな入り口でした。


無血革命-池袋演芸場


地上で切符を買って地下に降りると、もぎりの女の人が風流な団扇をくれました。

春風亭昇太が師匠の春風亭柳昇の句をしたためたものですね。


無血革命-池袋演芸場


すでに昼の部が始まっているホールの扉を開けると、驚いたことに観客席はほぼ満席でした。

通路や階段にも臨時のパイプ椅子があつらえられて、その椅子すらいっぱいです。
しかし席数が90席余りしかないためかホールの空間は少し広めの教室くらいの感覚で、高座の落語家がまるで担任の先生のような距離感でしゃべっていました。


しばらくの間後ろに立って眺めていましたが、一席終わると座布団返しの前座さんが舞台の上から「そちらが空いているからどうぞおかけください」と空席を教えてくれました。

途中から来て立っているお客さんは前座の指示で残らず座るシステムのようです。


この日の仲トリは林家正蔵で、トリは柳家三三でした。

正蔵師匠はこぶ平時代と変わらぬ滑舌の悪さで何度も噛んでいました。

しかし人が良さそうで愛嬌があるから許せます。


三三さんは「さんざ」と読むのですがこの日初めて知りました。

夏らしく怪談ネタのお化け長屋をやったのですが、人を引き込むような巧妙な語り口でした。

まだ若い噺家さんですが、舞台袖から見たときの「横顔のかっこいい噺家」の第1位だそうです。

その日に同じ高座を務めた他の噺家さんがそう言っていました。


僕の大好きな紙切りの林家正楽師匠も出演しました。

この日はお客さんのリクエストで「宮里藍」、「鶴」、「坂本龍馬」、「読書感想文」を切ってくれました。

「読書感想文」と言われたときはほんのしばらく悩んでいましたが、「読書感想文はまず本を読まないと書けないから」と、カーテンがそよぐ涼しげな部屋で読書をしている少女のシルエットを見事に切り抜いていました。


いつか正楽師匠にお題をリクエストして切り絵をお土産にもらうのが僕の夢です。