最高裁判事の任命予想
最高裁の山﨑敏充判事の定年退官が令和元年8月30日と、あと2か月ちょっとに迫っています。
そこで、公認の最高裁判事の予想を含め、いろいろ分析してみたいと思います。
まず、最高裁判事は長官を含め15人いますが、そのうち裁判官出身者枠が6、検察官出身者枠が2、弁護士出身者枠が4、学者出身者枠が1、行政官出身者枠が2というのが、ここ数十年固定されています。
山﨑判事は裁判官出身ですので、後任も裁判官出身者になることが確実。(もちろん、任命権者である内閣で思惑があれば、そうじゃなくなることもありうるかと。)
裁判官出身者は、ほぼ高裁長官から最高裁判事になっています。例外は、戦後、最高裁判所が創設された当初を除けば、数名だけ、最高裁事務総長や地裁所長、高裁部総括から任命された人がいます。
高裁長官といっても、東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の8庁がありますが、このうち、札幌、高松高裁長官からは、直接最高裁判事になった人はいません。東京が25人、大阪が21人、名古屋が3人、広島が1人、福岡が4人、仙台が2人です。
次に、最高裁判事になる人の主なキャリアですが、よく言われるのが、最高裁事務総長、司法研修所長、最高裁首席調査官の3つのポストの経験者がなりやすいと言われています。
たとえば、2000年以降に最高裁判事に任命されたのは、全部で町田顕元長官から深山卓也判事までの20人いますが、事務総長経験者が7人、司法研修所長経験者が3人、最高裁首席調査官経験者が3人、いずれも経験がない人が6人となっています。
いずれの経験もない6人については、事務総局の局長経験者が3人、法務省民事局長経験者が2人、それらの経験がない人が1人となっています。
そこで、これらの経歴的な分析から、まずは現在の高裁長官について見ましょう。
(1)東京高裁・林道晴長官(34期)(退官予定日:令和4年8月30日)
民事・行政局長、経理局長、静岡地裁所長、最高裁首席調査官を歴任しており、最有力候補と言えます。在任期間も1年半ほどですので、問題ありません。
(2)大阪高裁・安浪亮介長官(35期)(退官予定日:令和4年4月18日)
人事局長、静岡地裁所長、東京地裁所長を歴任しています。上記3ポストの経歴はありませんが、東京地裁所長の経験もあり、経歴的には十分ですが、まだ半年ほどの在任期間のため、少し早い気がします。
(3)名古屋高裁・綿引万里子長官(32期)(退官予定日:令和2年5月1日)
最高裁上席調査官、宇都宮地裁所長、横浜家裁所長、札幌高裁長官を歴任しています。経歴的には、やや弱いところもあるのですが、この人がなるとしたら、裁判官出身者枠で、女性初という肩書きです。今年の初めまでは、女性判事が小法廷ごとに3人いたのが、次々と定年を迎え、女性が1人しか残っていないことから、女性判事を増やしたいという思惑が働くのであれば、この人しかいませんので、高裁の林長官のかなり有力な対抗馬(失礼ですかね?)と言えるでしょう。
(4)広島高裁・大門匡長官(34期)(退官予定日:令和2年10月18日)
千葉家裁、横浜家裁、東京家裁を歴任していますが、3ポストや最高裁事務総局の局長経験がなく、家庭局の課長経験しかないことがネックです。在任期間は、もう少しで1年なので、ギリギリセーフでしょうか。
(5)福岡高裁・小林昭彦長官(33期)(退官予定日:令和2年2月4日)
東京地裁の民事の所長代行、仙台地裁の所長を歴任していますが、大門長官同様、3ポストや局長経験がありません。内閣官房や法務省の出向歴がありますので、そちらでややカバーされるかといったところでしょうか。安倍内閣の好きなお友だち人事であれば、内閣官房時代が、第1次安倍政権と被っているので、その辺で接点があるとチャンスがあるかもしれませんね、邪推ですが。
(6)仙台高裁・秋吉淳一郎長官(34期)(退官予定日:令和2年9月18日)
最高裁上席調査官、仙台地裁所長を歴任しています。この方も、大門長官、小林長官同様に3ポスト等の経験がありませんが、最高裁調査官や司法研修所教官が長いので、可能性はなきにしもあらず。
(7)札幌高裁・植村稔長官(34期)(退官予定日:令和2年7月19日)
刑事局長、甲府地家裁所長、横浜地裁所長を歴任していますが、3ポスト経験はありません。しかし、そこは問題ないでしょう。これまで札幌からの最高裁判事の任命がないことに加え、在任期間がまだ1年に達しないので、可能性の低い候補となるでしょう。さらに、定年まで1年ほどしかなく、そこでさらにもう1ポスト高裁長官をやるのも難しいでしょう。
(8)高松高裁・秋葉康弘長官(33期)(退官予定日:令和2年1月11日)
福島地裁所長の経歴を除けば、最高裁判事候補として有力な経歴は少ないと思います。司研教官や高裁事務局長くらいですね。また、高松高裁は、かなり小さい高裁で、これまでも最高裁判事に直接なられた方がいない(間接的にもなられた方はいないと思います。)ので、可能性はかなり低いと思います。定年まであと半年ちょっとですし。
次に、近年の傾向では可能性が低いですが、3ポストの現職を分析してみます。
(9)最高裁・今崎幸彦事務総長(35期)(退官予定日:令和4年11月9日)
経理局長、水戸地裁を歴任しています。
(10)司法研修所・永野厚郎所長(35期)(退官予定日:令和3年4月7日)
民事・行政局長、前橋地裁所長を歴任しています。
(11)最高裁・尾島明首席調査官(37期)(退官予定日:令和5年8月31日)
最高裁上席調査官、静岡地裁所長を歴任しています。それに加えて、小林長官同様、第1次安倍政権時代に、内閣法制局勤務があります。
ここからは、完全に予想の話になりますが、山﨑判事の後任候補は、高裁の林長官と名古屋高裁の綿引長官の一騎打ちというところではないでしょうか。裁判官としての経歴だけでいえば、十中八九、林長官なのですが、女性初というラベルはかなりの付加価値だと思うことと、林長官は長官の中では若いので、次のチャンスもあると言えることなどから、6:4で綿引長官が有利かな、と。
実は、女性初は、ここを逃すの、候補になりそうな人も限られているというのがありまして。
それと、山﨑判事の次に定年を迎えるのは、小池判事の令和3年7月2日、大谷長官の令和4年6月22日、菅野判事の令和4年7月2日となっていて、難しい問題なのが、綿引長官が後任となった場合、林長官と安浪長官以外は完全にチャンスがなく、林長官が先になれば、安浪長官もないということになります。その辺の先の玉突き人事を考慮すると、高裁長官が滞留しないためには、綿引長官ではなく、林長官という選択肢になる可能性もあると思います。
などと、完全に個人的な分析でした。