金属バットがあまりテレビに呼ばれないのは、本人たちが「やりたくない仕事はやらない」という態度でいることもあるが、その一方でMC格の大御所先輩たちから「一緒にやりたくない」と思われているからではないかと想像したりもする。

 ここまでに記してきたように(昔は知らんが近年は)意識的に尖ったふるまいをするわけでもなく、彼らのラジオを聴くと先輩たちと親しげに飲んでいる場面もよく出てくるが、それはあくまでも寄席やプライベートでのこと。

 テレビ番組をコントロールする立場のMCからすると、マイペースで自分たちなりの空気感を持っている金属バットは扱いづらく感じるだろう。

 

 あとこれもまた、私の個人的な肩入れが過ぎる見方かもしれないが、売れっ子テレビ芸人たちからすると金属の在り方は「自分のことを否定されている」ように感じるところもあるのではないか。

 

「第7世代ブーム」が華やかなりしころ。番組のタイトルも内容も忘れたが、霜降り明星と他何人かが街頭に出て「第7世代で誰が好き?」みたいな質問をしていた。

 その時に1人の女性が「第7世代かどうかはわからないけど金属バットが好き」と答えると、せいやは「ライブシーンやないか!」とツッコんでいた。

 

 ユーチューブのニューヨークの番組にAマッソが出た際のこと。

 プロフィルをまともに答えない加納に対して屋敷が「金属バットみたいやなあ」というと、「2021年の金属バットみたいは悪口や」(加納)「2019年までは誉め言葉やけどな」(村上)と返していた。

 

 まあどちらも軽い「お笑い」として言っただけかもしれないが、劇場中心に一定以上の人気を保ち続けている金属に対し、テレビ芸能人になった身からすると良くも悪くもいろいろな思いがありそうなふうにも感じたものだった。

 

 かつて「お笑いBIG3」が敷いた「お笑い芸人からテレビ向けマルチタレントへ」という売れっ子への道筋。

 近年はこれに「ひな壇芸人」を経由するというのが一種の王道とされているが、金属バットはそれには背を向けている。

 意識的に避けているというよりは、「どっちでもいい」という感じであまり気に留めていないというか、「売れっ子の人気者になって稼ぐ」ことに価値を感じていないように傍目からは見える。

 

 舞台や営業中心で稼いでいる芸人は金属以外にもたくさんいるが、その多くは「一度テレビタレントを目指しながらもリタイヤした者たち」だったりする。

 しかし金属はそもそもその道で戦おうとしていない。

 

 激戦を戦い抜いてきた売れっ子たちからすると、そんな金属の態度は「逃げ」に映るのかもしれない。

 

 しかし劇場中心の芸人たちの多くが「万人ウケ」を志向するのに対し、金属は「自分たちの好きなことだけをやっている」というふうにもみえる。

 いわゆるインディーズの地下芸人みたいなことをやりながら、しっかり多くのファンを抱えていて、しかもその劇場においても売れようと足掻かないというのは、古今東西の芸人たちのなかでもかなり異質な存在だ。

 稼ぎたいなら主催ライブをどんどん打ったり、単独ツアーを開催するなりやりようはいくらでもあるのに、「めんどうくさい」と常打ちの寄席や他の若手主催ライブなどに客演するばかりで、金属ファンたちはそれらへカネを落としていく。

 

 劇場関係者や仲間の芸人たちにしてみれば、金属バットは実にありがたい存在であるに違いない。

 

 あともう一回ぐらい書くかな?