あまり記憶にないんだけど、ワイドショーっていつから政治や経済まで扱いだしたんだろう。
ザ・ぼんちの「そーなんです川崎さん」じゃないけれども、昔はあくまでもいわゆる三面記事とか芸能ニュースがメーンであって、政治経済は扱ってもストレートニュースぐらいのことだったんじゃないかなあ。
「朝まで生テレビ」で政治経済などいわゆるお堅い話も演出次第で数字が取れるということになって、1990年の前後あたりから「ビートたけしのTVタックル」や島田紳助がキャスターを務めた「サンデープロジェクト」で「ニュースを分かり易くバラエティ的に扱う」という方向性が生まれ、それがワイドショーにまで波及したという流れになるのかな。
それでもたけしや紳助はまだ、笑いを交えつつもニュースの本質のところには本気で取り組むという姿勢が見えたような気がするんだなあ。
もちろんギャグは言うんだけど、それ以外のところはそれなりに責任感を持って、基本的に専門家の意見を聴く側という立ち位置を守っていたように記憶している。
つまり当初の「難しいニュースを分かり易く」という方針は、専門家によるちゃんとした論考が大元にあって、それを芸人なりタレントなりが噛み砕いて視聴者に提供するという形だったハズなんだ。
ところが、今はどうよ。
政治や経済の素人が、自分の感想を勝手に言いたい放題しているだけじゃないか。
爆笑問題の漫才のようなことを各局朝のワイドショーでやっている(逆から見れば「だから爆問の漫才がつまらないんだ」とも言えそうだが)。
「ニュースを簡単に分かり易く」と言うと、まるで正しいことのように思われるかもしれないけれど、だけどどうしようもなく難しく、とても短時間で表せないような問題というのは確実に存在するのだよ。
「利益調整」という一点だけを見ても複雑な諸問題が絡み合う政治や外交などを、素人の狭い知識からつくり出した物差しで測ろうとしたって、できっこないんだ。
だけどコメンテーターどもは自分の物差しが正しいと思い込んで、まるでそれが正論であるかのような物言いを平気でやっている。
しかもその物差しというのは、「戦後民主主義教育」という過度なバイアスのかかった歪んだものだったりする。
奴らだって物理法則についてコメントしろといわれれば「分からない」というだろう。
だけど実際にワイドショーで政治や経済について語るコメンテーターどものやっていることは、小学校の算数で物理法則を語っているようなものなのだ。
相対性理論を足し算や引き算で説明しようとして、「こんなわけの分からないことは実際にはあんまり役立ちませんよ」「相対性理論は使用禁止にしましょう」というような無責任なことを、今のワイドショーにおいては政治経済についてやっているというわけだ。
そうして悪いことに、テレビというのはなんだかんだ言っても影響力があるんだよなあ。
それで素人の唱える素人考えの意見が、さも正論のように社会に広がっていくことになってしまった。
先の物理の例でいえば「相対性理論なんてややこしいことを持ち出すのは何かその裏で胡麻化しをしようとしているからだ」「誰にでも理解できる四則計算で導かれることにこそ真理がある」という馬鹿げた理屈がまかり通るのが今の日本の社会なのだ。
大宅壮一の言った「一億総白痴化」がまさに今、テレビによって成し遂げられてしまった。
そんな状況を作ってしまったワイドショーというのは実に罪深く、私としてはすぐにでも政府主導で「ストレートニュースと学者の肩書のある者以外の解説は放送禁止」としてもらいたいぐらいに感じている。