たぶん、この人がいなかったら、私はギャンブルにハマることはなかっただろう。

清水成駿。

最近では競馬のほうは、まず真剣に見ることはなかったので、病に伏せていたとは知らなかった。

清水のちょっと気取った予想の書き口は、やや前時代的というか寺山修司的というか、正直にいえばあまり好きではなかった。

だがそれよりも、その予想スタイルだ。
競馬が単純な馬の競走というだけのものではなく、馬主や調教師、騎手等々、周囲の人間の感情が入り組んでレースが成立しているということを堂々とメディア上で言い放ったのはおそらくこの人が最初ではなかったか。
「ジャパンカップは外交だ」とかね。
今になって振り返れば、まだ競馬から暴力団やら闇勢力の影が完全に抜けきっていなかった当時としては相当勇気の要る発言だったように思う。

初めて馬券に触った大学1年の頃。それからしばらくして私は、清水の競馬予想について書いたソフトカバーの新書本。KKベストセラーズだったか。
これを読み込み、なるほど賭け事というのはじつに重層的なものなのだなあと面白味を感じ、ハマっていった。


今は競馬よりも競輪ばかりとなったが、単なる脚力勝負ではなく選手たちの心情や事情をついつい勘案してしまうのは、間違いなく清水の影響を受けたことによるものだ。

ご冥福を祈ります。