"あなたのSTYLEを輝かせ、CAREERを磨く"
キャリアブランディング
株式会社CCI 代表取締役
元国際線チーフパーサー
研修講師の山本洋子です。
35年前の今日、
1985年5月20日は、
私がJALに入社した日。
「胸震わせて臨んだ入社式から
もう35年も経つんだぁ〜」と
流れる月日を感慨深く思いながら、
入社式の様子はこちら↓
本日のCAREER STORYです。
CA訓練に入る前の研修で、
大阪空港のグランドホステスとして、
デビューしたのですが。。。
実は、
今はグランドホステスとは言わないのです。
今はグランドスタッフですね。
これまでの経緯はこちら↓
航空会社は業種で言えば、
運輸業。
CAやグランドスタッフは
接客業です。
あくまでも航空会社は
公共交通機関ですので、
安全運航、
定時運航が大命題。
同じ接客業でも
ホテルやデパートの接客とは
大きく違うところです。
ベースには
「お客様の命を守る」
「安全第一」
という理念があります。
例えば、
空港でのセキュリティチェック。
飛行機に乗る前には
必ず手荷物と身体チェックがあります。
ナイフやハサミなど
安全を害する危険性があるものは
機内には持ち込むことは出来ません。
9.11のアメリカ同時多発テロ以降、
航空業界は大きく変わりました。
テロに対する警戒が最高レベルに
引き上げられ、
飛行機に乗る前のセキュリティチェックも
とても厳しいルールに変更されました。
以前は、
お子様を操縦室に案内して
パイロットと一緒に写真を撮ったりも
出来たのですが、
この頃から
操縦室への立ち入りも禁止です。
当時のセキュリティチェックは
今ほど厳しくはなかったのですが、
それでも機内に持ち込めるものには
制限があります。
夏休みに入った頃
ホノルル行きの便に
小学校低学年くらいの男の子を連れた
ご夫婦がご搭乗になりました。
男の子は切り絵が好きらしく、
機内で切り絵を楽しむために
ハサミを持っていました。
規定以上の刃渡りのあるハサミは
機内には持ち込めません。
凶器になるからです。
案の定セキュリティチェックで
引っかかり没収となるのですが、
男の子には理解が出来ません。
取り上げられることを知った男の子は
泣き喚き、
検査官とお客様が
揉めています。
出発時刻がギリギリなので、
ここでグズグズしていられません。
このご家族を早く飛行機まで
ご案内しないといけないのです。
この時私は。。。
「ルールだからダメなものはダメ。
出発時刻が近づいているんだから、
早く諦めて。
ハサミぐらいホノルルで買えばいいでしょ。」
って思ったんです。
そのまま文字にすると、
我ながら、意地悪〜って
思っちゃいますよね。
でも当時は、
新人研修で
定時運航の重要性を叩き込まれ、
使命感を持って仕事をしていたので、
定時に出発しないと他のお客様に迷惑になる‼️
の一心だったのです。
だから、
ここで揉めている場合ではないと。。。
安全とサービス。
迷ったら
安全を優先させなければいけないのが、
航空会社の使命です。
この場合も、
当然安全が優先。
つまり、
男の子が泣き喚こうが、
お父様が抗議しようが、
ハサミは持ち込めない。
諦めてもらうしかないのです。
今ならば
もう少しましな対応が出来たのでしょうが、
当時は定時に飛行機を出発させることしか
頭が及びません。
まだ接客の経験も少ない研修生でしたが、
とても冷たい対応をしてしまったのです。
何とかこのご家族を飛行機までご案内し、
無事定刻に出発させることが出来ました。
飛行機を見送ったあとに
私の心に残ったもの。
飛行機を定刻に出発させた
安堵感と達成感。
でもどこか
やるせないモヤモヤ。。。
"なんでもう少し優しい言葉を
かけてあげられなかったんだろう"
"楽しい旅行の始まりなのに、
なんで嫌な思いをさせてしまったんだろう"
ハサミを持ち込めないというルールは
変えられないけれど、
男の子の気持ちをもう少し汲んであげることは
出来たはずです。
悲しい気持ちでホノルルに旅立っていった
男の子の気持ちを思うと、
何とも言えない情けない気持ち。
航空会社には
安全を除外視したサービスはありません。
多少お客様にご不便をお掛けしたとしても、
多少お客様に不愉快な思いをさせたとしても、
それが安全に関わることであれば、
安全が最優先されるのです。
その上で、
お客様にベストなサービスをする。
それが
航空会社の接客です。
この一件以来、
のちにCAとしてフライトするようになっても、
「安全」と「お客様サービス」のはざまで
思い悩み続けることになるのです。
安全はあって当たり前。
その上で、
お客様にご満足いただくサービスをするのが、
プロなのです。
これが、
わかったのはずっとあと、
CAになってから。
新人は色々な経験を通して
その道のプロになっていくのです。
今日も最後までお付き合いいただきまして、
ありがとうございます。