特養から病院へうつってきた某患者さんの話。
病院へうつってきたのは、かれこれ4年前の事。 4年前、特養から移ってきた時点で完全寝たきり、
全介助が必要で意思疎通が全く出来ない、言葉も話せないと言われていた患者さんがいます。
私が病院に入ったのは3年前ですが、その時から一切会話も出来ないし、話しかけても目すら合わせないしで
他の職員からも、「 話しかけても駄目だよ~、入ってきた当時からだし、特養でも意思疎通が出来なくて
胃ろうになる前も一切会話出来なかったらしいよ。 だから相手するだけ無駄だよ。」 と言われ続けてました。
が・・・そう言われると、余計に話しかけたくなる性で、3年前に入ってから、欠かさず話しかけ続けてました。
おはようございます。 オムツ交換しますね、洋服汚れているから着替えましょうね。
寒いですね~、お腹すきましたね~、これからご飯にしますからね~、今日は天気が良いですね~。
あらゆる事を話しかけ、他の患者さんが独り言で話をしているのを聞きながら、〇〇さんは今日も元気ですね~
××さんはご機嫌いかがですか~と。
そして昨日の事。
昨日は入浴の日で、本来、排便等で汚れていたりすると、オムツを交換せずに入浴の番が来るまで
ちょっと我慢していただくような感じを介護課ではとっているのですが、私はその方法は好きではなく
どうせ風呂に入って着替えるんだから・・・ではなく、汚れていたらすぐに変えてあげるべきと捉えているので
介護課の職員が、「 **さん、そのままで良いよ。 」 と首を突っ込んできたのですが、「 いや、私がやります。
このままじゃ本人だって気持ち悪いだろうし、風邪引いたらどうするんですか!」 と、交換に入ったのです。
まぁ、他の職員は、じゃ、好きにすればーと冷たい視線で私を見てましたが、既に下痢をしていて
ズボンからシャツ、防水シーツを通り越してベッドパットまでびっしょりの状態なのに、順番まで放置なんて
できませーんと、冷たい視線を横目に、着替え一式を用意しベッドに戻ったのです。
「 こんな状態になるまでごめんねぇ。気持ち悪かったでしょ。」 と言うと、こっちを見て、「 うん。」と返事。
え?気のせい?と思いましたが、「 洋服も全部着替えますからね。寒いかもしれないけど、少しの間だけ
我慢して下さいね。」 と言うと、私の方を見て 「 だいじょうぶだよ、いつもありがとうね。」と。
気のせいじゃないじゃん!と思った瞬間、目がうるうるしだして、「 すぐ着替えましょう。オムツも交換しますから
ね、綺麗なオムツの方が気持ちが良いものね。」 と半べそ状態で汚れた洋服を脱がそうとしたら、
これまたミラクルです。
今まで一度たりとも自分で洋服を脱ごうとしたりした事もなかったのに、手で袖を引っ張って
自分で腕を袖から出そうとし、次にシャツを自分の顔まであげて、手でシャツを引っ張って顔を出したのです。
「 凄い!!**さん、自分でやれるの?」 と聞くと、「 お手伝いしただけ。動くの遅いけどね。」と。
オムツを交換し、洋服も着替え終わると、「 〇-ちゃん、ありがとうね。すっきりしたよ。」 とお礼の言葉。
私の名前も他の職員が呼んでいるからか覚えてくれていたみたいで、頭文字の一つをとって〇-ちゃんと。
布団をかけて、またあとでねと部屋を出、入浴後、もう一回部屋に入ってみました。
「 お風呂どうだった? さっぱりできた?」 と聞くと、「 気持ち良かったよ。もうちょっと温まりたかったけどね。」と。
また、朝は偶然かもしれないと半信半疑な部分もあったので、「 じゃ、私が洋服を着せましょうか。」と
着替えをかって出たのですが、これまでは足を伸ばしてと声をかけても、曲げたまま足を伸ばさなかった
**さんが、「 足を伸ばせますか?」 と言うと、足を伸ばしてズボンをはきやすいようにしてくれる。
シャツを着る時も、自分で袖に腕を入れて、頭も自分で通してくれました。
「 湯ざめしないように布団かけておきますか?」 と聞くと、「 お願いします。」
布団をかけて、「 じゃ、そろそろ自分の持ち場に戻りますね。」 と言ったら、手招きし小さい声で
「 他の人には内緒。 だって〇-ちゃんだけよ。毎日話しかけてくれるのも、オムツをすぐ変えてくれるのも。
だから他の人には私が喋れるのも、ちょっと動けるのも秘密ね。他の人きたら私は寝たきり婆ちゃんだからね。」
と。
**さんの心を開くまで、3年かかったわけですが、すごーい嬉しいぞ!!
最後、「 寝たきり婆ちゃんして知らん顔しててごめんね。でも、信用出来る人かどうか自信なかったの。」
って。 「 良いよ~、気にしないで下さいね。」 と部屋を後にしたのですが、**さんが完全寝たきりの振りして
何年もいたのは、職員に対する彼女なりの抵抗だったのかもしれません。