皆さんはピック病をご存じでしょうか?

知らない方はこちらをご覧ください。

ピック病とは、若年性認知症の一つであり、認知症と呼ばれる病気の中でも、もっとも厄介な病気です。ピック病は働き盛りの年齢に発症する事も多く、介護保険も適用されるため、介護サービスを受ける事も可能ですが、介護の分野であっても、実際どのようにケアしたら良いのか分からない職員も多く、問題行動を起こす事から、殆どの介護施設での受け入れを拒否されてしまうのが現状です。

●ピック病と診断されたら、家族はどのようにしたら良いのでしょうか。

認知症と言う言葉は、既に世間一般でも認知度が高いと思いますが、ピック病についての認知度はまだまだ低く知られていないのが現状です。私自身、ピック病専門の施設で働いているわけではありませんが何でもウェルカムな病院で働いているだけあって、ピック病の方も当然入院されてます。そんな経験から、今回はピック病について話をしていこうと思います。

①時刻表的生活

ピック病は主に働き盛りの年齢に発症しますが、初期の段階では時刻表通りのような生活を取るようになります毎日決まった時間に起きる。決まった時間に食事を取る。 決まった時間にテレビを見る。決まった時間にお風呂に入る。 決まった時間に布団に入る等。 ピック病と診断されても、本人には全く自覚がないため、起きてパジャマを着ているままの状態で家を出て駅まで歩いて会社に行こうとする事もあります。(財布を持たず鞄も持たず着の身着のまま出かけてしまう。道に迷う事もなく行って帰ってくる事もできます。)自宅で介護する上で注意しなければならないのが、この生活リズムを壊さない事。

夕方再放送で水戸黄門が放送されてますが、曜日によっては放送されてない日もありますが、テレビをつけて水戸黄門が始まらない事で混乱し、部屋中グルグル徘徊したり、暴れたりし始めます。また朝昼晩、食事を出す時間が遅れたり、早まったりも混乱を招くので、同じ時間に食事を出す。本人が食べたければ食べるし、食べたくなければ食べない事もありますが、無理やり食べさせようとしてはいけません。

②食べ物の好みが変わる、異食するようになる。

甘いものは嫌いだったのに甘いものしか食べなくなる、味覚が変わりしょうゆやソースをドバドバかける。食べれるもの、食べれないものの判断がつかなくなり、生ゴミをあさって食べてしまったり、ペットのうんちを食べたりもする。ポータブルトイレにおしっこをし、おしっこを飲む事もある。庭に出て草花をむしって食べる、泥でも石でも口に運んで食べようとしてしまうので、調味料等は全て隠し取りだせないようにしなければなりません。

③異常行動 (善悪の区別がつかなくなる)

一番多いのが万引き。 お店に入りお金を払わず店を出てくる。 お店に入り、お金を払っていないのにその場で袋を開けて食べだす、飲みだす。食堂等に入りお金を払わず店を出る(無銭飲食)。ピック病と診断される事で最も多いケースがこのパターンで、警察が来てもお店の人に万引きだろ!と言われても、本人は全く悪びれた様子もなく、何故店の人が怒っているのか分からない、何故警察がきて怒られているのかが分からないといった状態になる。

家族が来てその場で謝罪し、お父さんなんて事するの!お母さんなんて事したの!と半狂乱になってもその理由が全く分からず子供のように泣き出したり、暴れ出したり、部屋中徘徊したりして、病院へ行き結果ピック病ですと診断される。 いつ何の気なしに襲ってくるか分からないのがピック病ですが既にピック病と診断された後であれば、絶対に一人で外出させない事。 必ず家族の誰かが付き添って一緒に行動する事です。

④単語が分かっても意味が分からない、用途を忘れる

お母さん出かけるから財布くれ!と言われて財布を渡す。でも、財布=お金=大切なもの と言う認識が出来なくなり、財布を捨ててしまう。お金があってもお金をどう使うかが分からなくなる。お金を捨てる。ご飯を食べるのにお箸を使うが、お箸の使い方が分からない。手で掴んで食べる。はさみ、包丁、カッターめがね、石鹸、日常生活で普通に使えていたものが、一切使えなくなります。家中にある鋭利なもの、鉛筆、シャープペン、ボールペンも隠さなければなりません。包丁やはさみも隠さなければなりません。使い方が分からず混乱し怪我する事も多いので、要求されても渡さない事です。


⑤反復行動、独語

同じ場所を行ったり来たり、部屋中をずっとグルグル回る等の徘徊が多くなります。何を聞いても同じことを延々繰り返して話をする、目の前に誰かいるのでは?と思えるほど、ずっと一人で話をしている。意味のない事を延々と話続けたり、仕事で培ってきた知識を延々と説明し続けたりするので見ている家族も当然落ち着かないしイライラします。 初期の段階であれば時間になったら寝てくれますが病状が進行していくと日中夜問わず行動するようになるので、薬を使わなければならない状態になります。

ピック病の不思議なところは、例えば深夜0時から、早朝7時まで延々独語が続いた場合、常識的に考えれば、夜一睡もしていないのだから、日中寝てくれるだろうと誰もが思うものですが、寝ない事も多いのです。 日中もしきりに徘徊を続け、静かになったと思ったら、横になりながらまた独語。衰弱して眠りにつくか、睡眠薬を調整しながら、少しでも寝てもらう時間を作るしか出来なくなってくるのです。


⑥無気力、無関心、意欲減退

散々徘徊、独語、乱暴な行為があったかと思えば、突然無気力になる、無関心になる事もあります。部屋に引きこもって一切出てこなくなる。食事も取らない、着替えもしない、風呂にも入らない、布団に寝たまま排尿、排便をし、それでも本人は排尿、排便で汚れている、臭っている事にも気付かず嫌気がさして、強引に部屋に入り込み、着替えをさせようとしても生きた屍のごとく動こうともせず全てにおいて意欲がなくなってしまいます。その姿はまるでホームレス・・・と言ったら失礼かもしれませんが洋服に便がこびりついていようとも、本人は全くお構いなしで、急にスイッチが入り徘徊スタートとなると部屋中に臭いが充満し、そのままソファーに座ったり、テーブルに腰かけたりで大変です。

ピック病になると、環境の変化にも敏感になりますが、ある程度環境になれると落ち着きます。少し静かになりますが、それでも徘徊、独語、窃盗等の癖は直りません。他人の部屋に入って何か勝手に持ってきてしまう、食べているお菓子や食事を取り上げて自分で食べてしまう暴れたり、大声で叫んだりする事から、施設ではケアしきれずお断りする事も多いのですが、その結果、介護の領域と言われていても精神病院や認知症の閉鎖病棟等の入院を迫られます。介護施設で受け入れてくれるところは、本当に稀だと思いますが、唯一受け入れ先があるとしたら介護療養型医療施設、認知症病床のある特別養護老人ホーム、ピック病専門のグループホームだけと思います。

ただ、正直なところ、家族で介護するにも限界があります。私自身、仕事でピック病の方のケアはしていますが、自宅で介護しろ!と言われたら、一人じゃ絶対に手に負えません!となってしまいます。 病院内だからこそ自分以外の職員の目も光っているし、食事を出す時間ひとつとっても、病院だからこそ、常に同じ生活リズムを保てているわけなので、自宅で看ながら同じリズムを保ってケアしましょうと言っても無理だと思います。でも、仕事とは言え、可能な限り混乱させることなく、落ち着いて生活出来るよう提供出来るのは他の認知症や特定疾患で入院されている高齢者より、寿命が限られている事を知っているからだと思います。

もちろん、ピック病と宣告されてからの平均寿命は個人差はありますが、発症してから〇年と数字を見てしまうと長くてもあと〇年、短ければあと〇年か・・・と、頭の中で計算してしまう自分もいて、自分に何が出来るかを考えると、否定もせず肯定もせずあるがままを受け入れ寄り添って見守る事しか出来ないんですよね。意思疎通が全く出来ないわけでもないし、調子が良い時は話しかけると言葉になっていない事も多いけど「のん・の・・・・のののののの・・・。」と問いかけには答えてくれる事もあります。入院した頃はもっとしっかり喋れていたのにと悲しくなる事もありますが、語彙が少なくなってしまうのも仕方が無い事です。

ピック病と診断された後、どうするかは家族次第ですが、限界が来るまで介護しようとは思わない事です。施設に入れるなんて酷い家族よね!と親戚あたりに揶揄される事もあるでしょうが、家族で24時間付きっきりで監視するのは限界があります。もし、そんな境遇にいる方はピック病について説明し、後は無視しましょう。決めるのは家族です。また、本人が嫌がっているからと自宅で介護しようとされている方もいるかと思いますが、本人には最終的には施設と自宅の区別すらつかなくなります。 早めに新しい環境に慣れさせてあげた方がかえって本人には良い事もあるので、家族がうつ病や精神疾患に陥る前に手をうって下さい。プロでも逃げ出したくなるのがピック病ですから誰も家族を責めたりしませんよ。