存在は意識を規定する、とマルクスは言ったが、これはまったく正しい。いい思いをさせてもらった相手が実はとんでもない悪事を働いていようと、もらったほうは批判しづらい。それが人情だ。世の中にあふれているもっともらしい報道、解説、分析、意見、感想の類のほとんどが、浮世のしがらみによってあらかじめ規定されているとしたら、正義や真実など早晩」この世から消えてなくなるだろう。社会のうまみを味わっている者らに、社会の改革など望むべくもない。人はしがらみのない純粋正義の土俵で勝負をかけるしかない。主人もちの奴隷の言論が、まるで社会の総意のような面をして天下の往来を歩いている。そのことに異常さにそろそろ気づいてもよい頃だ。