秋の別会能<第1日> の感想 | 能楽師 辰巳満次郎様 ファンブログ

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いつもはほぼ同時に書く感想が、イロイロあって、ちと遅くなりました。
今月は文楽も行ったし、目一杯の(宝生の)観能月間になりました。来月もこのペースかも…。
実のところ別会はどうしようかと思っていたのですが、友人のススメ?もあってチケットを購入。いや~、今回はハズレ無しの素晴らしい内容でした。
 ココ→秋の別会能<第1日>

 

「雨月」は初見です。
情緒なしのパサパサの粗筋は、嵯峨野に住む西行法師が住吉明神に参詣し、住吉の神に出会うというもの。高砂では青年の神ですが、こちらは老体の神で真ノ序ノ舞を舞います。
しかし、よくよく別の解説を読んだら神官の老人に住吉明神が神懸かりとなって舞う、とあります。当日配布の解説には省略でした。そういえば確かに最後には幣を放り投げました。巻絹と同じパターンですね。
さて、このお能はやはり前場の方が見所があるように思いました。
板屋の作り物がワキ座に置かれ、引廻しをはずすとそこには老翁(床机)と老媼(下ニ居)がいます。板屋の屋根は一部が葺き残してあり、翁は秋の時雨の雨音が聞きたいから屋根を葺こうと言い、媼は洩れ来る月影を見たいから屋根は葺くまいと言います。
この部分でシテとツレも謡を堪能していて、ハタと「そうか、雨と月でだから雨月なんだ~!」と迂闊にもそれまで全く気付かなかったのでした。ヒェ~、とひとり見所で恥ずかしかった♀…。
ここにワキの西行法師がからんで歌問答となり、後場では和歌の徳を称え…、アレレ、やっぱり変化はあれども巻絹と同じ展開。あちらは音無天神、こちらは住吉明神…。
このシテとツレはどちらも好きで、特に掛け合いでは謡も良いし非常に楽しめました。ワキは謡はうまいし美声なんですけれど、シテじゃないんだからさ~、という感じが否めません。(ワタシがそう思うだけ?)
後シテの「真ノ序ノ舞」って、序ノ舞にさらに真まで付くからには長くてゆっくりでゼッタイ寝ない自信がナイと思っていましたが、案外短いものなんですね。(←本当か? 要確認!)

 

 

 

「江口」もライブでは初見です。ライブじゃないビデオ(国立能楽堂の記録映像)では佐野萌師の江口を一度観ました。後で気付いたのですが、この能も西行がらみですね。
江口の君と西行法師…、ちょっとソソル題材なのか、長唄に「時雨西行」という曲があって、いろいろな流派が振りを付けています。もちろん吉村流にもあります。
チケットを取った時、今回はこの「江口」があったので、脇正面は避けました。しかし正面席に良いところはあまりなかったので、ちょっと節約して中正面にしました。後場に川舟に遊女三人が乗るところがあるのに、脇正面からだと3人の後姿しか見えないからです。友人にそう言ったら、「そうなのよ、失敗した~。でも近くで見たけど装束がすごく良かったよ~。装束ウォッチングしちゃった~。」という答えが…。
そう、遊女(で普賢菩薩)だけあって、素晴らしい唐織(全体が金地で扇模様に秋草や菊などが散っている総柄)!でしたが、その分緋大口がなんだかくたびれて見えてしまい、ちょっと残念な印象でした。(まあ緋大口チョッピリしか見えないんですけれど)
しかしライブは良いですわ~。ビデオで観た時も素晴らしいと思ったけれど、やはりビデオはビデオで、ただの記録でしかありません。
高橋章師は決して大きい方ではない(ツレとならぶとすごく小さい)けれど、舞台の上ではちっとも小さく見えません。ハコビもすごくキレイで能を以外と観ていないのですが、去年は「松風」だったのに、風邪気味だったワタシはほとんどが夢の中で情けなかったので、今年は頑張りました。が、地謡がすごく良くて、瞬間的にトリップしてしまい、気付いたら遊女は普賢菩薩になってしまってました…。(;_;)

 

 

 

 

「天鼓」は予定では佐野萌師だったのですが、病気療養中とのことで佐野由於師が代演です。偶然ですが、今月は佐野ファミリー総出になりました。しかし、これが良かったです。ワタシが佐野由於師シテで拝見した中では一番良かったと思いました。
代演ということで、かなりプレッシャーもあったと思いますが、それが良いほうに舞台に現れたと思います。月並の熊坂ではどちらかといえば前シテの方が良いと思いましたが、こちらでは後シテの方が良かったです。
装束は萌黄地に金の模様(何かは良く見えなかった)の半切に、やはり萌黄地の法被を肩脱ぎし、なんとピンクの厚板です。子供っぽさを出しているのかな~、と思いました。
また本日の小書きで「楽」がバンシキだったのですが、一噌幸弘さんがもうノリノリで素晴らしい音を出し、それに舞がノッて、代演の責任を120%果たした素晴らしい舞台になりました。
そういえば、この「天鼓」も観ているうちに、「藤戸」と非常にパターンが似ていることに気付きました。月並の鑑賞記録に、「女郎花」vs「田村」、なぞ書きましたが、こっちも「天鼓」vs「藤戸」って感じがします。どちらも前シテは子供を殺された親(父vs母)、後シテは殺された子供の幽霊(悦びvs恨み)、季節は秋vs春…。
これも根拠レスな直感なんですけどね~。

 

 

 

 

別会能は、お能の合間に仕舞が3番ずつ舞われます。仕舞についてもちょと感想を書きますと…、
 【駒ノ段】 
   この方は全てにおいて知的って感じがします。仕事キッチリ、というか…。
 【東北】  
   今月月並の班女のシテの方。班女ではン~、と思いましたが、東北は良かったです。
   やっぱり班女が難しいんですね~。
   使った扇がまた凝っていて(東北に因んだ)金地に梅の古木?が書いてある扇! 
   この方、去年も鵜ノ段の仕舞の時、松明に使う方の扇が天紅で、こういうのに凝る
   タイプ(というかセンスがある)みたいです。
 【黒塚】
   渡邊荀之助師は、こういう情念メラメラ物がホントにイイです。来月の「鉄輪」が楽しみ!
 【生田敦盛】
   退紅色って感じのピンク!の裃をお召しです。で、この方がウマイ!ほんと何を演って
   もすごくウマイ!溜息が出るほどホントにウマイ! 
   扇も紺地に中央に黒金と銀とで雲が書いてあるものをお使いです。修羅道を表現して
   いるのか、裃に映えます。一方刀にするもう一本の扇は銀だし…、ふぅ~。
 【杜若】
   この方はこういう柔らかいものがすごく良いです。「蝉の空衣」の謡ってこういう風に謡
   うのかと、納得。白地に本金の五雲の扇。
 【遊行柳】
   何も言うことナシです。昨年も思ったけど、ここまで来るともう何か自由です。確かに立
   ち坐りはスムーズではありませんがそれはもう関係ない世界です。
   いわゆる「守・破・離」の「離」からさらに先に行っているのでは、と感じさせます。
   まさに「老いたる柳」でした。扇は黒金の砂子地にくすんだ萌黄の五雲。
ワタシは上方(地唄)舞を続けているせいか、特に仕舞だと、どんな扇を使うのか非常に気になります。特にプロの仕舞は衣裳が基本的には(黒)紋付なので、仕舞の元のお能の雰囲気を少しでもハッキリと伝える為には「扇」が唯一と言っていいくらいの小道具なので…。演者のセンスが問われますね。