辰巳満次郎先生のメルマガ・アーカイブ、第36弾をお送りします。
どうぞ、お楽しみください。
残暑厳しきながらも、確実に秋の気配も近付き、少しばかり、
ほっとするところです。
今回は能から残る言葉のひとつ「カン高い声」の
お話をさせていただきましょう。

「カン高い」は「甲高い」と書きます。
ご存知の様に「とてつもなく高い声」という事ですが、
何故「甲」の字を使うのか…?
これは日本音階で使われる「甲」と言う高い音から来ています。
「甲」音において、尺八や篠笛などでは細かい音階が
さらにありますが、能に於ける「謡」では基本的な音階として
「甲・クリ・ウキ・上・中・下・呂」
の音を使います。(注:高い順)
甲の音を使うときは「怒り」「哀み」「恐れ」など
その感情が極地に達した状況
を表現しています。
楽器として様々な日本の管楽器が使う「甲」音は、
人間には発生困難な音もありますが、謡の場合は
最高音として存在します。
そんな意味から「甲高い声」は、単にとてつもなく高い音
という事だけではなく、その精神状態、状況をも含んだ
意味として能から伝わっているのです。
能の笛では最高音は「ヒシギ」と言う
「あまりにも高い音で周りがガタガタと振動する(ひしぐ)」
と言う意味として存在します。
「呂・中・甲」と言うメロディ展開で単に高い旋律を
「甲」と表現しています。
つまり、「甲高い」は単に高い音ではなく、
人間の発声可能な最高音、
能の謡の「甲」から来ているのであります。
辰巳満次郎


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