明日から五月。
なので滑り込み(日付だけはね!)でもう一本、書いておきましょう!
四月度五雲会の最後の番組は「船弁慶」、言わずと知れた人気曲です。
見せ場タップリで、前半は静御前/後半が平知盛、と云わば前半で三番目モノ、後半で五番目(尾能)モノの、一粒で二度オイシイ、アーモンド

おシテの藪克徳師は、この夏に独立してようやく2年になろうか、という新進気鋭の能楽師です。
その誠実なお人柄は、ちょうど2年前ぐらいのなるほどがってんポッドキャスティングのインタビューで余すトコロなく

(あのインタビューから、ファンになりました~

ま、舞台に立つ人はその舞台さえ素晴らしければ、性格が悪かろうが素行が悪かろうが頭が悪かろうが構わない、と言えば言えるカモしれませんが、ことお能に関しては舞台に人間性がハッキリと映し出されてしまう恐ろしさ、非情さがあるように思えてなりません。
藪師の「船弁慶」は、そんな
お人柄+日頃のたゆまぬ精進が結実した見事な舞台だった
と言っても過言ではない!とまり子はここに宣言いたしますっ!
って、それぐらい

Facebookの「いいね!」並みでございます。
なので、難しくはあるけれどどこがどう良かったのかをちょと書いてみることにいたします。
藪師はどちらかと言えば小柄と思しきタイプ。
しかし、お能に於いては小柄なのはマイナスではありません。
昔の美術品ともいえる装束が着られるし、天下の美女を美女らしく自然に見せられるし。
前半の静御前がね~、絶品でした。
例えば辰巳満次郎様

藪師のはね~、可憐で可愛い(世間知らず?な)でも芯の強い静御前なんです~。
この静御前だったら、義経も別れが辛くて敢えて嵐の中旅立ちたくないよね、と思う程。
(う~ん、なんで同じ日に「吉野静」を持ってきたんかなぁ…)
だから弁慶がモリツネ師だったんだけど、前半ではカタキ役に見えてしまいましたよ…。
お能では歌舞伎なんかと違って、敢えて足を内股にしたり肩を落としたりせずにそのままで女性役をしてもいいんだけど、ちゃんと役を意識しているかしていないかは一目瞭然。
烏帽子をはらっ、と落とすトコロも見事に決まり、もう納得の前シテでございました。
とまあ、ここまではまり子の予測のとおり(上回ってたけど)
問題は後半です。
「船弁慶」で前半も後半も両方のバランスがとれていて素晴らしいのはナカナカ難しい…。
どなたでもだいたいどちらかがより良い、ってパターンが多いんじゃないかな~。
辰巳満次郎様

ところでちょっとだけ話は大きく逸れますが、刷り込みっちゅうのはオソロシイもんで。
まり子の知盛像は、最初の大河ドラマ「源義経」に出てきた知盛なんです。
阿部寛でなく、当時の芸名の市村竹之丞(中村富十郎)!
この姿がまり子の知盛像として刷り込まれているのです。
(ちょっと歪んでる?)
さて話を戻します。
この知盛像が刷り込まれているまり子の予想では、藪師の知盛はちと弱いカナ~、でした。
(申し訳ないっ

しかぁし!
見事に裏切られましたっ!
感動するぐらいの、裏切られようっ!
アッパレ藪ちゃん、明日はホームランだいっ (←古っ!) てなもんです!
幽霊なのに、見事な筋肉質(それも細マッチョ!)な知盛!
それでいて、けっこう雅な感じがするんですよ~!
長刀さばきがね、ブンブンじゃなくて、フッフッと空気を斬る感じなの~!
スピードがあっても見事に重心が決まって揺らぎません!
(コレはアタリマエか?)
で、特筆すべきはですね、面(怪士)の目の穴からほの暗い燐光が見えたことです!
辰巳満次郎様

燐光とは…、マッタク…

この日の藪師には、ゼッタイに何かが降りてきていましたねっ!
え~、シテばっかりについて書いてしまいましたが、この日の間狂言(船頭)がいつもより長く、小鼓の森澤師によれば省略ナシだったとのこと。
目一杯の「船弁慶」だったのであります。
ただね~、義経役の子方チャンがやっぱりへにゃへにゃで…。
どこか悪いんじゃないかと心配でしょうがありません。
やっぱりコドモは元気じゃないと…!
ね!
おしまい

