まだシツコク「道成寺」にこだわっております。
能の「道成寺」は二代目の鐘にまつわるお話なんですが、シテが鐘入りでお着替えしている間、
ワキが初代の鐘にまつわる因縁を語ります。
このワキが語る部分が所謂「安珍・清姫」の物語なのです。
「安珍・清姫」伝説には諸説あって、清姫が寡婦だった説もあるのですが、その名前に
「清」を戴いている程なのですから、やっぱり清らかな乙女だった説に軍配を挙げたい
ではありませんか?
昨年の「満次郎

道成寺―大蛇になった乙女 (能の絵本)/片山 清司

って、実はワキが語るのも、乙女の物語なんですけど…。
話はちょいと逸れて、能の「道成寺」から様々な芸能が生まれていることは
皆様ご存知と存じますが、
・能「道成寺」→歌舞伎舞踊「京鹿子娘道成寺」、地唄「鐘が岬」等
・ワキ語り部分→文楽「日高川入相花王」、地唄「古道成寺」等
とざっくり2系統ありますが、特に地唄の「古道成寺」はワキ語りの詞章が殆どそのまま
採られています。
(以下はまた歪訳ね♪)
昔、真砂(マナゴ)の荘司と言う者に、娘(清姫)がひとりいました。
その頃奥州⇔熊野を往復する若い、多分イケメンの僧(安珍)が真砂の荘司の館を常宿と
していましたが、荘司は娘を溺愛していたので、娘の喜ぶ顔見たさについ、
「アノお兄ちゃんがお前のお婿さんになるんだよ」
と語って聞かせていました。
娘はそれを疑いもせず(当然だよねぇ)幼心に
「大きくなったらアノお兄ちゃんのお嫁さんになるんだ~♪」
と信じ込んで年月をおくりました。
ハイっ、ここでもう誰が悪いのかわかりましたね。
元凶は真砂の荘司サンだったんですよ。
成長して美しい乙女となった娘は、いつまでたっても何もいってこない客僧にしびれをきらし、
実力行使にでます。
(だってお父さんのお墨付きだから…)
「いつまで待てばいいの?早くお嫁さんにしてちょうだい」
びっくりしたのは客僧です。寝耳に水たぁこの事だいっ。
仏に仕える身で妻帯はできません。(マジメな安珍くん…)
嘘も方便、とにかくこの場を切り抜けねば…。
「うん。わかった。夜が更けたら僕が君の部屋に行くから。」
と娘を納得させ、夜陰に紛れて逃げ出したのです…。
ハイっ、もうひとり。
このワキ語りの安珍は、被害者でもありますが、清姫にちゃんと向き合わなかったが故に、
身を滅ぼす羽目に陥りました。
まり子から言わせたらさ、可哀相だけど可哀相じゃないオトコだね~。
この後、安珍と清姫がどうなったかは、皆様ご存知ですね。
語りはこう締め括ります。
なんぼう恐ろし物語り
でもコレって、オトコの理屈だよね~。
