
先日の東京大薪能の感想を、ようやくですが、ちょこっと書いてみたいと
思います。
今回も、サラリーマンやОLなど仕事帰りの人達も押し寄せてるようで、
会場は大混雑!立ち見で溢れてましたが、
なんとか正面椅子席で拝見出来ました

残暑が厳しい日だったものの、司会者が登場する頃には風も爽やかに吹いて、
そびえ立つ都庁舎の窓明かりが灯れば、絶景の大都会の夜景!
高層ビルと木彫の能舞台のコントラストも、不思議と違和感がありません。
屋外では、役者がピンマイクを使います。
ライトアップされた仮設舞台と、スピーカーを通して聞こえる謡は、
さながら能楽&狂言ショーといった赴きですが、能楽堂とは違う
解放感と臨場感があります。
演能の前に解説がありました。
「お能は省略の芸術」
最小限度の表現で演ずることで、かえって演じ手の内面性を強調できる。
また、観る側の想像に委ねている。
ふむふむ…なるほど。観る側もいろんな受け取り方があっていいわけですね。
最初の『放下僧』は、シテの辰巳満次郎師が、とにかく頼もしい兄

禅の修行者という品格も兼ね備えていて、貫禄たっぷり。
ツレの山内崇生師の小次郎は、純粋なハートを持つ好青年といった感じ。
こんなふたりなので「頑張れ!牧野兄弟!」などと、
ミーハーな応援をしてしまうのでした(笑)。
クライマックスの舞のシーンでは、淡々と美しい舞姿を見せつつ、
相手のスキを狙っている緊張感が漂います。
さすが満次郎先生です!手に汗握りました~。
仇討ちを遂げて、ふたりが肩を並べたとき、
“リアル兄弟!?”という錯覚を起こしました(笑)。
(ツーショットはもちろん、オペラグラスでしっかりウオッチ~)
仇討ち=親殺しへの復讐という陰惨な雰囲気は無く、
本懐を遂げて颯爽と消えてゆく仲良し兄弟に、オメデトウと拍手喝采!\(^O^)/
次回は、能楽堂でじっくり鑑賞してみたいと思いました。
ちなみに。禅問答でツレの小次郎が「切って三断と為す!」と、
ワキの利根信俊に襲いかかるところ、
ツレ「切って三枚におろす!」
シテ「あぁ~暫く!切って三枚におろすとは、我らが料理人の
詞なるを・・・・???」
「何言うてんねん、三枚におろす!ってなんでやねん!」
と、ツレに激しく突っ込むシテ。
というパロディーバージョンも見てみたいです(ムリか)。わはは!
『黒塚』は、夏場にはぴったりなホラーなお話です。
しかも、いろんな解釈が出来そうな奥深さがあります。
最初に紫色の引き回しに覆われた作り物が舞台中央に出され、
前シテの老女が登場します。
マカライト(孔雀石)ブルーというか、ペパーミントグリーンの美しい
唐織が目を引きました。
シテの渡邊荀之助師の落ち着いた謡は、この後起きるショッキングな出来事を
予見させるようで、凄みさえ感じます。やがて、
「私の寝室を絶対に見ないでください」と、外出する老女。
狂言方の台詞が、インパクトがあって印象的でした。
「私のクセは、人が見よ!と言うものは見たくなく、
見るな!いうものは見たくて見たくて仕方ない~」
その気持ちわかるぅ~(^3^)
約束を破る愚かな人間に襲いかかる鬼婆の恐怖!!キャ~

なのですが、
誰にもある人間心理を描いているところに、この曲の魅力があると思いました。
他人に本性や秘密を知られまいとする→“猜疑心”
人を裏切ってでも秘密を知りたいという
“好奇心”→“怖いもの見たさ”でしょうか。
閨にあった山積みの白骨死体は、同じように老女を裏切った人たちなのでしょうか?
荀之助師の後シテの鬼婆は、激しく襲いかかるというより、
般若面からは恐ろしさと憂いが滲みでて、人の秘密を暴いた罪悪感を
悟らせようとする執心を感じました。
28日に開催された、いわむら城趾薪能はどうだったのかしら・・・
満次郎師の『黒塚』はどんな感じかしら?どんな恐ろしさなのかしら?
いろんな方の『黒塚』を拝見してみたいと思いました。
まる子
