正直あんなカタチでシーズン途中から磐田に移籍した時点で、祐希のことはもうあきらめていた。だからそこまでガッカリ感は強くない。
磐田では常にサブには入っていたみたいだけど、そこまで重用されていたわけでもなさそう。そんな状態だったから、育成費を払ってまで磐田が獲得することもないのかな、と思っていたんだけど、意外と評価されていたみたいで。
まぁ、現状育成費貰えるならフロントは出すだろう。そこも納得している。
ただ、一つだけ。
祐希に知っていて欲しいことがある。
君より15年くらいは先に生きた者としての経験から。
どの分野の職種でも、いとも簡単に難問から逃げ出すくらいの気持ちしかない者で、超一流になる人はいないということ。
壁に当たってこそ人は成長する。
壁をスルーしての成長はない。
そして一度逃げを経験すると、その「逃げ」に対するハードルも下がるということ。
きっと祐希は自分が超一流になるため、今まで色々なものを自分に課してきたと思う。できる限り甘さを排除してきたと思う。でも、今回すでに二度、ぶち当たった壁から逃げた。一つはシーズン途中でのレンタル移籍。そして2度目は今回、ヴェルディという嫌な思い出からの逃避。もう一度ヴェルディに残って、一から最初の壁に戻って立ち向かうことを拒否した。多分その自信がなかったんだろう。
たった半年で2度も逃げてしまった。自分の中での「逃げ」に対するハードルが下がったからだ。
まぁ、しょうがない。だってまだ20歳。
でも、超一流になるんだったらそれでも乗り越える。
その細かいハードル・壁を乗り越えてきた猛者だけが一流になり、その中の一握りが超一流になる。
一度逃げを経験したらその楽さに抗えなくなる。
人間ってそういうもんだもの。
これに気づくのはその後何年も人生経験を経た後ってパターンが多い。
まぁ、もう遅いね。
超一流になるんだったら、J2のチームをJ1へ上げる原動力くらいにはなれないとね。
レンタル移籍した先のチームで、速攻ポジションを掴んで常にスタメンに名を連ねるくらいでないとね。
今、祐希はどっちにもなれていないってことを肝に銘じて欲しい。
現状は磐田から、若手の有望株の1人として今後を見据えて獲ってもらえただけのこと。
若さってね、その後の伸びしろ込みで色々大目に見て貰えるものなんだよ。
でも超一流の選手になるには、その伸びしろを埋めなきゃならない。
目先の壁から逃げ出すような者に、その伸びしろが埋められるほど、人生は甘かない。
香川だってJ2で3年燻った。
その3年なくして今の香川はありえない。
香川は逃げずに自分の力でセレッソをJ1へ上げ、海外への切符も手にした。
しっかり一つずつ壁を乗り越えたからこそのステップアップだ。
香川だって森島が引退したときに後継者に指名されて、そこから逃げなかった。
超一流になる人材ってのはこういう奴だ。
J1のステージに楽して上がったとて、現状の自分は変えられていないと思うよ。
現状は、J2で失敗したというだけの選手なのだから。
磐田に行ってからは、もう逃げないで欲しい。
俺は祐希が本気で超一流になることを目指していたから期待をかけて応援したんだ。
ユニの背番号だって10にした。
でも、逃げるだけでキャリアアップを重ねていくのなら、きっといい未来は待っていないよ。
ただの選手では終わってほしくない。
いつか、代表で活躍する祐希を見せて欲しい。