「アンネの日記」 アンネ・フランク | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.



言わずと知れた世界的ベスト・セラー。数回目の再読です。

小学生のころから皆藤幸蔵さん訳をずっと愛読していましたが、
今回は20年ほど前に出版された深町眞理子さんによる「完全版」です。

読みなれた訳とはかなり違いがあり、読み始めてしばらくの間は違和感があった。
大人の書いた物語のようというか、人に読ませるために書いているという印象で
文章から垣間見えるアンネがどことなくそらぞらしく感じられたし、
アンネの個性も生きていないように思えた。
いくらアンネが早熟で大人っぽかったといっても、本物のというか、年齢をそれなりに
経てきた人の文章とはまた、少し違うと思うのだ。
とにかく妙に練れているところが私としては読んでいて気になったわけです。

ただ、アンネ自体がこの日記をいつか出版したいという意識で書いていたということを読み、
それを踏まえての翻訳であるならこの訳がふさわしいのかもしれないと思ったりもした。
が、そういう違和感も3分の1あたりを過ぎたあたりからは、いつもと同様
アンネにすっかり感情移入してしまい、以後そのことはあまり気にせずに読むことができた。


多分誰もが、彼女の年齢には似つかわしくないような洞察力、精神力、
そして論理性などに驚きを禁じえないと思う。
特に14歳の誕生日を過ぎたあたりからの精神の成長は目ざましかったと思う。
狭い住居に3組8人の住人・・・そのうえ外に出ることもできず、音をたてないように
細心の注意を絶えず払っていなくてはならないということのストレスは
一体どれだけのものだっただろう。
加えて、気の合わない同居人、母親とのいさかいなどにより
一時期はイライラ感もかなり強くなってきているように読み取れたけれど、
同じころ、同居人のペーターに恋心に近いものを感じるようになってからは
満ち足りた穏やかな面も頻繁に顔を出すようになっていた。
どんな環境においても「愛情」というものは人にとってもっとも重要なものなのだ、
とつくづく思った。
しかしそういう恋心もどきを抱きながらも、冷静にペーターを評価し、自分を律している
ところもまた驚かされた点ではある。

彼女の持って生まれた知性もあると思うけれど、この冷静さは彼女が「書く」ことで
ますます磨かれていったものではないかと思う。
と、同時に「書く」ことが団体の中で感じる孤独をどんなに癒してくれるかということは
私も実感として持っているので、彼女にとってどれだけこの日記が慰めになっていたか
想像に難くない。
それはブログにも通じるものがないとは言えないけれど、やはり他者が見ることを
意識して書いたものとは全く異なるもので、私信や日記でしか得られない癒しだと思う。

途中「死んでからも生き続けたい」といった内容の一文があり、
そこでは思わず涙してしまったけれど、1冊の本として出版され
全世界で読まれることで、ある意味それはかなったのではないかと思う。
と同時に「作家かジャーナリストになりたい」という夢も、
図らずもという形ではあるが、かなったと思う。
人はそれぞれそれなりの使命を持って生まれてきて、そして死んでいくものだと
私は思っているので短くはあったけれど、これが彼女の人生における
重要な使命だったと思うしかない。

日記は、何者かの密告によりアンネたちが逮捕される数日前で終わっているけれど、
その唐突な終りと、彼女たちのその後を考えると暗たんたる気持ちになる。
けれど、全編を通してみるとアンネたちの置かれていた悲惨な現実よりも、
彼女の生命力や精神力に目を奪われてしまう。

13~15歳という若い、というよりもまだ子供と呼んでも不適切ではない年齢での少女が
書いたにもかかわらず、大変に大人びた内容です。
ただ彼女の知性が同世代の中でひときわ優っていたとしても、多分この時代を生きた人たちの
多くが多少の差こそあれ、彼女のようにやはり大人びた考え方をしていたのだろうと思う。
日本でもこの時期に特攻隊で出撃した若者の辞世の手紙などが公開されることがあるけれど
あれらも本当に今の同年代の精神年齢から考えるとはるかに大人と言えるだろうし。
当時と比べて長命になったことで、もしかしたら精神年齢も当時の2倍くらいかけて
成長しているのかもしれないですね。
当時の15歳が、今だと30歳くらいとか・・・そんな感じで。

戦争そのものについては、ここでは書きませんが何か抑止力になるものがないものかとは思う。
このアンネの日記のみならず、文献やモニュメントなどの資料は山ほどあるし
それを見て心を痛めた人間もまた山ほどいるのに、そこからいつまでたっても学べないは、
とても不思議なことだと思う。


表紙と装丁は私の大好きな安野光雅さんによるもの。
新書サイズで2段組み、およそ500ページにわたる長編です。


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アンネたちの隠れ家生活を支えた主要人物の一人、ミープ・ヒースさんによる回想。
本当に献身的に尽くされたようでアンネもたびたび日記中で感謝の言葉を書いていた。
ミープさんの視点でのアンネたち、また隠れ家の外つまりオランダの当時の様子などを
ぜひ読んでみたいと思います。
今年、2014年1月に100歳で亡くなったと今日知りました。
アンネたちとともに、ご冥福をお祈りしたいと思います。

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