中学生の頃は西洋モノにかぶれていて、音楽も洋楽をメインで聞いていた。
そして本も翻訳モノをよく読んでいて、その中でもアガサ・クリスティと
エラリー・クィーンは図書館にある作品の多分ほとんどを読んだと思う。
でも、あらすじや結末を覚えているものは「オリエント急行殺人事件」くらいで
あとは全く覚えていない。
先日、本読みの友人と「そして誰もいなくなった」の結末が話題になって
どちらも曖昧だったので、じゃもう一度読んでみようかとなり再読に至りました。
多少名前に記憶がある、あるいは全くない人からそれぞれ招待を受け
10人の男女が、インディアン島にやってくる。
ところが招待者である主人の姿はなく、主人の依頼を受けたという、
これもまたテンポラルに雇われた召使の夫婦が迎えてくれただけ。
お互いに打ち解ける時間もなく、不安を感じながら最初の晩餐が始まるが、
突然招待客全員の過去の犯罪を暴く声がダイニングに鳴り響く。
そしてそこから「10人のインディアン」の歌詞どおりにひとり、またひとりと
招待客が殺害されていくことになる。
これまでほぼ接点がなかった人々をここに呼びだし、殺害を行う理由と目的は?
事件の視点が客観的なものだったり、登場人物それぞれのものだったりと
次々変わっていく中で、う~ん誰だったっけ?と思いながら注意深く読んだ
つもりだったけれど、やはりわからない。
犯人の心理描写もあるはずなのに、うまく書かれているので犯人がわかる
最後を知ってから読みなおすと、なるほどと思えるけれども少なくとも
途中で特定するのは難しい。
紙に書いたりしていけばわかるかもしれないけれど、それがこの本を読む
目的ではなかったし。
とにかくあっという間に面白く読み終えました。
結果は・・・まあコナン君も、近代知少年も、もちろんその祖父?
金田一耕助が出てくるわけでもないので謎解きは第三者によらず告白という形で
読み手は知ることになります。
動機とか犯行方法は、ここまで手の込んだことをするほどのものかなと
思えなくもないけれども、とにかく読者を引っ張る力は最後まで
衰えることはありません。
翻訳はチャンドラーシリーズでおなじみの清水俊二さん。
端正な翻訳で私はとても好きですね。
もう新訳も出ているそうですが、私は新訳になじめないことが多いので
これで満足。
表紙私の読んだハヤカワ版ではタロットカードがモチーフのようで
なかなか素敵でした。
表紙の右上に「Ten Little Niggers」とあってびっくり。
これが原題?
調べてみたらやはりそうで、そうなんだけど徐々に変わって行ったらしい。
この作品がアメリカで発表された当時、niggerが黒人差別につながるということで
indianに変わったのだとか。
当時はそれでよかったみたいですが、後にindianもいけないということで
solderになったりしているそう。
今は翻訳どおりのように「And Then There Were None」が多いとのこと。
これも米国が先で、のちに英国本国もそれに倣って改題しているのだとか。
それに併せて、作品中で使われる歌も「Ten little nigger」から「Ten little indian」へ
そして今は「Ten little solders」に変わっているものもあるのだとか。
島の名前には言及されていなかったけれど、当初はインディアン島ではなかった
ということになるのかしら?
言葉狩りって、誰かに狩られる前に自ら自粛してしまうこともあるのだろうけれど
なんだか微妙ですねえ。
時代時代を反映するものとして残しても良いように思うし、それを差別として
受け取るかどうかは読み手の知性の問題で、大騒ぎする人は実はろくに
読んだりしていないこともあるように思います。
岩波の「ちびくろサンボ」とか、つい先日話題になった「はだしのゲン」とか
取るに足らないことが原因だと思うんだけどな。
これは今回のこととは関係ないのでいずれまた。
クリスティ、また読みたいです。
映画のワンシーン。テーマとなる曲が聴けます。
清水訳。清水先生はチャンドラーシリーズでもそうでしたが
「裸」を「裸か」と送り仮名をつけているのが特徴。なぜ??
そして誰もいなくなった (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 1-1))/早川書房

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こちらは新訳。表紙は同じでした。
そして誰もいなくなった (クリスティー文庫)/早川書房

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